真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

「レイヤー・ケーキ」(2004)甘く見えるけど甘くない。

マシュー・ヴォーン初監督作品。本当はガイ・リッチーが撮るはずだったらしいのだがなんかごたごたがあって降板したらしい。結果はそれで良かったんじゃないか。これはなかなか傑作だった。

 

 名もなき主人公の麻薬デューラーを007以前のダニエル・クレイグが演じる。表向きは不動産屋、しかし裏では麻薬を捌き金を稼いでいる麻薬デューラーxxxx(ダニエル・ブレイク)。彼は自らにルールを定めておりそれを実行することによって裏社会を上手い事生き抜いてきた。彼は裏社会に骨を埋めるつもりはなく、自らに課した最後のルール「好調なうちに引退」を実行すべく、裏社会から足を洗う事を考えていた。しかし世の中そんな思い通りにいくはずもなく、彼は組織のボスから裏社会の大物の娘の捜索とMDMAの取引と言う二つの仕事を依頼される。簡単に見えた仕事は一筋縄ではいかず娘の捜索は難航し、MDMAの取引のブツはオランダのマフィアからの盗品と判明する。しかもMDMAの奪還と、強奪の報復の命を受けたオランダマフィアの殺し屋に狙われる羽目になる。そんな中、彼は組織のボスの思惑を知ることとなり…みたいな105分のお話。

 

本作を見て思うのはイギリスにおける麻薬に関する緩さだ。麻薬絶対ダメの国の住人で、酒もたばこもさほど必要に感じない私のような人間からすると想像もつかない世界だ。イギリスの薬事情は日本のそれとは違う事を痛感させられる。法はあれど緩いというのが実態のようでこんな映画も作られるのだろう。ある話によると煙草よりも薬の方が安い場合があるっていうんだから想像を絶するね。英国系のアーティストの記事を読んでいても必ずと言っていいほど薬の話が出てくるし、実際に緩いんだろう。全然羨ましくないけど。

 

話は裏稼業、麻薬デューラーのお話で登場人物はほとんど裏稼業の人間達でろくでもない。しかしそんなろくでもない人間達も組織とか裏社会のしがらみでもがく様は一般社会のそれとほとんど変わらず滑稽だ。ハイリスク・ハイリターンで手にするものは違えども、結局、無法の中にも法があるというのは何とも皮肉でもある。主人公本人も、自らにルールを架しているが、どんなことにも明確なルール、理が必要という事を感じさせる。多分この世に完璧な無法はないんだろうな。

 

薬やらそれにまつわる人間の思惑がこんがらがった話なのだが、最終的には一つに収束して綺麗にまとまっている。悪いことをするとそれなりのツケを払わないといけないよと言うラストも個人的には非常にツボで切なくていい。

 

罪には罰を。因果は応報せねばなりますまい。

 

 

 クレイグと言えば武闘派ボンドなのだが、くたびれたおっさんも十分魅力的でイケる。

「ゴーストバスターズ」(2016)「ポテチは止まらない」そのセリフだけは胸に刻んだ…。

旧作は33年前か…。うーん月日の経つのは早い。

 

メンバーを女性に入れ替えてのリブート作。本来は旧作の続編の流れで制作したかったらしいのだがオリジナルの脚本家ハロルド・ライミスが亡くなったことによって完全リブートになったとか。それに伴って旧作の監督アイヴァン・ライトマンが降板しポール・フェイグにお鉢が回ってきたらしい。ポール・フェイグは「SPY/スパイ」が面白かったので期待していたのだが…。

 

コロンビア大学で教鞭をとるエリン・ギルバート(クリスティン・ウェグ)は終身雇用の審査を待つ身であるが、人には語りたくない過去を持つ。悪友であるアビー・イェーツ(メリッサ・マッカーシー)と共著で「過去からの幽霊」なるオカルト本を執筆した事があるのだ。その本がもとで幽霊退治の依頼が来てしまい、アビーとその連れジリアン・ホルツマン(ケイト・マッキノン)で幽霊屋敷に出かけることとなる…みたいな116分のお話。

 

率直な話、あまり面白くなかった。リブート作と言うのはどうしたって旧作との比較は避けられないと思うのだが、明らかに過去作の方が面白いように感じる。やってることは同じなんだけれど旧作のノリの方が上のように感じる。個人的な感覚ですが。一番個人的にダメだったのがジリアン・ホルツマン。そのノリが余計に邪魔に感じた。特攻野郎Aチームマードック的なイカれた役回りなんだろうけどなんか邪魔。2丁拳銃風のゴーストバスターガンで立ち回るところはカッコ良くて良く、冒頭にも書いたが、幽霊を前にして呟き行動した「ポテチは止まらない」と言う所だけは凄くイカスと思った。しかし全体的に見て何だか邪魔で、何と言うか、光るところは時折あるのに凄く残念なキャラだった。

 

この作品単品だけを見ればそんなにダメな映画ではないとは思う。局地的には面白かったりもするのだが、全体通して見ると面白いとも言い難く、個人的な感覚では視覚効果だけが進化したグレードダウンしたリブート作なのではないかと思った。一番個人的に上がったのが旧作のメンバーが出てきたときって…。

 

なんかノリが違うんだよなぁ。ぎゃふん!

 

 MADMAXがああだっただけに期待値が高すぎたか…。

「レヴェナント蘇えりし者」(2016)生きるという事…。

デカプリ悲願のオスカー獲得作。話は凡庸だけど画力が凄い。自然が凄い。しかしそんな事は関係なく復讐譚というのはどんなものであれ私の心の琴線に触れる。

 

ディカプリオ(面倒なのでデカプリと以後略す)と言うと結構な人気俳優で主演作も多い。しかし私はあまり見ていない。主演作に限ればただの一つも最初から最後まで見たことが無い。自分でも意外だったのだが、よくよく考えても見ていない。TVでやってるのを途中までとか途中からとかはあるものの何一つ通して見たことが無い。けれど嫌いなわけでもなく助演作に限って言えば「ギルバート・グレイブ」とか「クイック&デッド」とかは見ているし、その中でのデカプリには好印象を持っている。と言うわけで、主演デカプリ作品を初めて観きったった。

 

お話は復讐譚で実話を元にしたお話である。舞台は1820年代のアメリカ。毛皮の狩猟を生業とする商隊がネイティブ・アメリカンの襲撃を受け山に逃げ込むはめになるところから始まる。襲撃を逃れた一団は基地への帰投を図り、水路陸路のコース選択ででもめるものの陸路の山岳を抜けるコースを選択する。隊のガイドを務めるヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)はその際、偶然クマと遭遇、襲われて瀕死の重傷を負てしまう。負傷したグラスを連れて隊は進むがやがてそれが困難となってくる。隊の安全を優先させるため隊長であるアンドリュー・ヘンリー(ドーナル・グルーソン)は、もはや風前の灯と思われるグラスを置いて基地に戻ることを決定しグラスの最後を見届け、弔うように3人の志願者を残す。しかし残された三人のうちの一人ジョン・フィッツジェラルドトム・ハーディー)が他の二人がいない隙にグラスの殺害を試みるがグラスの息子ホーク(フォレスト・グッドラック)に見つかってしまう。グラスを助けようとしたホークをジムは返り討ちに殺してしまう。もう一人残ったジム(ウィル・ポーター)にそれを悟られるものの言いくるめ、グラスを置き去りにして基地へと戻っていた。瀕死のグラスはその一部始終をを見ていたが重傷のため身動きができず置き去りにされてしまう…。しかし強靭な意志と体力でグラスは死地を逃れることに成功し復讐を胸に抱いて息子を殺した宿敵の後を追跡する…みたいな、息子を殺された男の復讐劇を軸に西部開拓時代の大自然やら人々の軋轢による抗争やらの悲哀を描く156分のお話。

 

まず第一印象としてはデカプリ老けたなぁ、だった。初期の作品のイメージが強いためまだ若い感じがしてたんだけど、もう立派なおっさんだったことに驚いた。まあ当たり前の話なんだけど。私の中では日本の酒のCMに出てた頃の風貌の印象のままで止まっているのでちょっと驚いた。そりゃ私も老けるはずだわ…。

 

話的にはデカプリの復讐譚とは別の軸としてネイティブアメリカンアメリカ人、ネイティブアメリカンの部族間の抗争という軸がある。フランス人も出てくるが彼らとはネイティブアメリカン達は争ってない。むしろ商談とかしてる。1815年の英米戦争の停戦によりアメリカは国内拡張路線を進んでおり、アメリカ人の西部進出、所謂アメリカ人による西部開拓が進んでいくわけだが、その中でのネイティブ・アメリカンとの衝突も作中で描かれている。血で血を洗う抗争な分けなんだが襲ってくるネイティブアメリカンの戦闘能力が結構高いことにビビる。音もなく忍びより音もなく弓で射殺される。これが怖い。大体が、ネイティブアメリカン強制移住させるという暴挙に対しての反発であり、自業自得なのだが、狩られるものと言うのは「プレデター」的な恐怖で凄まじい。作中のアメリカ人たちは皆、ネイティブアメリカンのアリカラ族にビビっておりその戦闘能力の高さに対する恐怖の大きさがうかがえる。しかしそのネイティブアメリカンにしても一枚岩ではなく各部族での対立が作中でもうかがえる。結局の所、大小無数の対立が存在し混沌としている。そしてその全てに復讐とか憎悪と言う炎が宿っている所も怖い。負の感情の連鎖。加速度的に大きくなっていく復讐や報復。結構な感じで人間の芯の痛い所をえぐってくるお話で現代社会とリンクしてて、色々考えさせられる。ただ復讐と言う衝動は生きる動機にもなりえるようにも思う所が困ったとこなのだが…。

 

生きる。生き抜くという事は戦う事だ。本作の核心はそんなお題目だと感じる。しかしそれは戦い=争いではなく。生きる事こそ戦いだと問う。息をしろ、息をし続けろ。作中でそのフレーズを聞いた時そう感じた。本作の主人公であるグラスは最愛の息子を失い生きる術を亡くした。そして復讐にその命を生かされることになるのだが、物語の決幕にある決断をする。その答えが映画ならではのご都合主義とは思えない。最終的にその選択は思考放棄とか他人任せとか揶揄されるかもしれないが、思いを断ち切るという事もあらゆる葛藤を突き抜けた先の悟りの選択と言えるのではないだろうか。私はそう感じた。いや正直私には無理な選択だが。多分私なら、某映画のようにブギーマンになるだろう。ぎゃふん。

 

長い時間の映画なのだが個人的にはそれほど長く感じなかった。これは雄大大自然の画力に寄る所が大きい。陳腐な言い回しなのだが自然の画が非常に良いのだ。山とか川とか風景がとにかく綺麗なのだ。サバイバルなアベンジャー的な話と対比する感じで穏やかで雄大、実に美しい。この映画を見て確信したのだがどうやら私は海よりも山の方が好きなんだという事に気が付いた。どーでもいいことなのだが個人的な発見だった。それだけども見た価値はあった。そう思う。

 

 

 その大怪我がそんな短期間で回復するかい!などと野暮な突っ込みはしてはいけない。デカプリはそういう性能なのだと信じてみるのが正しいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「新・忍びの者」(1963)オリジナルでもなく続でもなく新から見てしまった…。

手に入りやすい物から少しずつ…。みたいな感じ。とにかく市川雷蔵成分が欲しい。

 

物語は石川五右衛門物。豊臣秀吉東野英治郎)の暗殺に失敗して窯ゆでの刑になった石川五右衛門市川雷蔵)は替え玉だった。徳川家康三島雅夫)の密命を受けた服部半蔵伊達三郎)の助けで窮地を脱した石川五右衛門は秀吉に妻子を殺された復讐を果たすべく秀吉に迫る…みたいなお話。86分白黒。

 

石川五右衛門と言うとFCソフト「がんばれゴエモン!からくり道中」のビジュアルが真っ先に思い浮かぶ。なんか傾いてるあの格好。そんな人間なので本作の市川雷蔵演じる所の真っ黒な忍び装束の真っ当な忍者ビジュアルの石川五右衛門は正直ピンとこなかった。しかし客観的に考えると本作の姿が正しいとは思う。目立っちゃいかんものなぁ忍。

 

太閤秀吉の朝鮮征伐を歴史背景に暗躍する忍者の活躍を描く本作だが一番びっくりしたのはその音楽だったりする。渡辺宙明のクレジットを見た時にちょっとびっくりした。特撮だけじゃないんだね。よくよく調べると最初はこっち系の音楽やってたというのを本作を見て知った。と言うかまだご存命という事を知りビビる。御年91歳だそう。長生きしていただきたいと切に願う。

 

物語的には正直微妙な出来のような気がする。つまらなくはないが面白くもない。人としての尊厳や価値について語る話。不平等が普通の世界で権力者に振り回される人間達の不条理を描いた作品でどことなく左な感じがする。しかしそんなこと関係なくカッコいい市川雷蔵と若かりし頃の若尾文子の別嬪さんぶりが半端ないファンムービーなのではないかと思う。

 

あと東野英治郎水戸黄門にしか見えない世代なのだが確かに秀吉もはまり役な気はした。

 

 

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忍び装束を着てこれだけ格好良いのは中々いない。ような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「火線上のハテルマ」全8巻 一粒で2度おいしいと思うか、味が変質したと思うか…。

どちらなのか判断するのが難しい。個人的には五分五分な感じ。

 

せきやてつじ作品。ビッグコミックスピリッツ誌上にて2013年~2016年まで連載されたトンデモアクションマンガ。この作者の他の作品は「ジャンゴ」は読んだことがあるが他は読んだことがない。

 

過去の失敗にトラウマを持つ日本人の元警官、梶。一族の恥と厄介払いで飛ばされたアメリカの地で梶は一人の男と出会う。男の名は波照間。謎多き凄腕の傭兵。波照間の強さに魅せられた梶は、波照間の所属する「エンパイアー・スクワット」なるSS*1集団に入隊を希望する。心に傷を負った梶の誇りを取り戻すための闘いの日々が始まる…みたいな話。

 

当初、普通のSS社会派人情物のような感じで始まった漫画なのだが物語中盤から超展開を向かえてオカルトSF的な週末黙示録と化す混沌とした物語。これを是とするか非とするかは各々の趣味が問われる所ではある。どちらかと言えば圧倒的に非の意見の方が多いような気がするが、個人的にはこんなトンデモオカルトSF展開も素敵なんじゃないかなとは思うのだが。物語序盤でもそんな感じは多少匂わせてる所もあったしね。ただ序盤の硬派な社会派人情SP物の線も面白く捨てがたい気もしないではない。ゆえに非の気持ちが分からんわけでもない。しかし綺麗にまとまった作品よりも歪に破綻したとしてもはっちゃけた作品の方に浪漫を感じる性質なのであえてこの路線に向かっていった事を評価してあげたい。素晴らしいハラショー!後半の中二病を拗らせっちゃたような頭の悪そうな世界観も個人的にはツボだったりする。良い。

 

話の長さもコンパクトにまとまっており個人的には満足な作品である。ただこの作品ウィキペディアにすら紹介されていないので人気はあんましなかったんだろうなぁ…。ぎゃふん。

 

 

火線上のハテルマ 8 (ビッグコミックス)

火線上のハテルマ 8 (ビッグコミックス)

 

 十字軍とか不死者とか…頭悪くて…最高なんじゃ。

「新選組始末記」(1963)古い時代劇を見たくなったのだが何を見ればいいのかよく分からなかったので…。

とりあえず俳優に当たりをつけて見ていこうかと思い、市川雷蔵に当たりをつけた。選択の理由は単純に名前がカッコいいから。だって雷蔵ですぜ。字面がカッケーぜ。結果、大当たりだったような気がする。面白かった。

 

物語の内容は題名の如く。京都での新選組結成から池田屋襲撃までの顛末を山崎烝市川雷蔵)を主人公に描く93分。

 

京都で浪人をしていた山崎烝市川雷蔵)はひょんなことから新選組近藤勇若山富三郎)と知り合うことになる。その際、武士の本懐とは男の心意気であると説明された山崎は近藤に惚れ込み、医学を志す恋人・志満(藤村志保)の反対にもかかわらず新選組に入隊する。そんな折、局長・芹沢鴨田崎潤)の粗暴な振る舞いを憂慮する近藤と同志の土方歳三天知茂)が芹沢鴨らを謀殺する事件が起きる。組織を掌握し、近藤が局長、土方が副長の新体制になった新選組には入隊者が激増し、新選組は日増しに大きくなっていったが、山崎の心には何か釈然としないものがあった…みたいな話。

 

市川雷蔵と言う名前は知っていたが作品は見たことが無かった。今回始めてみたのだが、これがすこぶる格好良く、面白かった。作風もハードボイルドな時代劇で非常にクールな感じで素敵。まあ題材が新選組なんで登場人物は殆ど野郎ばかりなのだがこれがまた硬派な感じで非常にイイ。非常にスタイリッシュな剣戟やら映像でもうたまらん感じ。市川雷蔵演じるところの山崎の青臭い理想に苦悩しながらも己の信じた道に命を賭ける件も良い。若山富三郎演じるところの近藤勇も良い。朴訥ながら信念を貫く田舎侍な感じと、その殺陣の美しさは素人ながら素晴らしく感じた。とにかく殺陣が美しい。噂には聞きていたのだが若山富三郎の殺陣は良い。主役をも喰う出色の出来だと思う。あと天知茂演じるずる賢さと意地悪さを兼ね備えた土方もまた良い。最近の新選組物だとなんかいい人になりがちだけど鬼の副長の異名を持つんだから憎まれ役であって欲しい。そんな願望を具現化したようなキャラで個人的には大満足だったりする。殺伐とした死生観も良く、美しくもなく、むごたらしい。死んだら無、そんな感じ。維新前のその凄惨な表現も凄く良い。

 

密偵役である山崎を主人公に据えた珍しい作品であるが、単純に市川雷蔵のカッコよさを認識した1本ともいえる。時折何とも言えないカッコいい姿に映るカットがあり目を奪われる。ああ、なるほどこれは人気が出る。納得させられた。昭和の格好良さだ。物語も揺れる組織の中の群像劇として面白いと思った。

 

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 結果、若山富三郎の過去作もチェックしたくなる作品だった。

「俺たちのフィールド」全㉞外伝①熱いのは嫌いじゃないし暑苦しくても全然大丈夫だが・・・・。

正直暑苦しくてクサすぎる。浪花節を超えた超難波節節。そこに耐性があるかないかで評価が変わる。リアルタイムでは物語途中で断念してしまったが結末は気になっていた…。因みに私はリザーブドックスの件で挫折したのだが、今回最後まで読み倒したよ。

 

村枝賢一作品。1992年~1998年まで週刊少年サンデー誌上にて連載されたサッカー漫画。全34巻プラス外伝1巻の合計全35巻(コミックス版)の大長編…。

 

 憧れのサッカー選手であった父を交通事故で亡くした主人公高杉和也の少年サッカーからワールドカップまでの道程とその後を描くフットボール群像劇みたいな話。

 

Jリーグ発足の2年前から連載が始まり、Jリーグの黎明期やW杯の日本代表の初出場なんかと連動して連載されていた作品だったのを覚えている。当時はサンデー買って読んでたなー懐かしい。同時期はJリーグ発足の盛り上がりもあり、やたらと少年誌でサッカー漫画の連載が多かった気もする。本作もその中の一つ。ただサッカー的な描写は漫画チックで大味だった印象を持っていたのだが、今回読み返してみてそれを再認識した。うん。何かね大味なサッカーなんですよ。改めて読んでもその認識は変わらなかった。微笑ましくはあるんですがね。作中は当時でも突っ込みを入れたくなるような話が多く、良い意味でも悪い意味でもマンガマンガしている。

 

個人的に漫画において重要だと思っているのが作品の中の現実感と言う奴だったりする。ミソなのが本当の現実ではなく、その物語の中の現実と言う所。要は作中ではそれが現実!と感じさせてくれるかどうかだと思う。その現実感と言うのが序盤から中盤まではギリギリアウトな感じで描かれていて、後半は完全アウト!みたいに当時の私は感じた。これがキツク当時の私は読むのをやめてしまったのだが、今回読み返してみるとこれはこれでありだなとも思えた。…これは単に感覚が劣化したのか読み手である私の懐が深くなったのかはさておき、最後の最後の外伝まで楽しく読むことができた。

 

結論的には面白かった。サッカー描写はさておき、この作者の真骨頂はそういう所ではなく、熱い人情話的な所なんだと思う。冒頭にも書いてけど基本、難波節な人なんだろう。この作者の作風から言ってもそっちの話がメインで書きたい人なんだろうと感じる。最終的にこの作者が仮面ライダーを書くとこに行き着くというのは個人的には超納得な感じだったりする。

 

 

 キャラで好きなのはダミアン・ロペス、騎場拓馬、伊武剣輔かな…。濃いな…。ぎゃふん!

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイアン・フィスト2」(2015)アメリカ発武侠映画の完全なる続編だが…。

普通シリーズ物と言うのは回を重ねるごとにスケールアップするものだが、本作はスケールダウンしている.。劇場未公開のソフトスルーなのも納得な作品。

 

物語は完全なる続編。前作で愛する人と両腕を失い、鋼鉄の腕を得たサディアス(RAZ)。彼は安息の地を求め旅に出た。しかしどこまでも因縁はついて回るようで前作で倒した銀獅子の弟を名乗る輩に襲撃される。撃退には成功したものの自身も深い傷を負い川に流されてしまう。そんなサディアスが流れ着いた先はホー組長が支配する鉱山の村だった。村の顔役リー・クン(ダスティン・ヌエン)の娘イノセンス(ピム・バベア)に助けらたサディアスは村で養生する中、理不尽な圧政に苦しむ村の惨状を目の当たりにする。心の平穏のため不戦を誓い、鋼鉄の拳を封印していたサディアスだったが圧政に苦しむ村の者らの為についに立ち上がる…みたいな90分のお話。

 

監督はロエル・レイネと言う人らしい。私はこの人の他の作品を見たことが無い。結構たくさん撮っている人の様だがそのラインナップを見ると…推して知るべしナ作品ばかりだったりする。本作を見る限り、きっとそういう映画専門の職人のような監督さんなのだろう。

 

映画の感想としてはまずショボい…。とにかくショボいのである。冒頭にも書いたがスケールダウン感が半端ではない。演者、舞台、お話までとにかく前作を大きく下回る出来になっている。前回はラッセルクロウだとかルーシー・リュウだとか異常に豪華だっただけに比べるとショボさは否めない。逆に演者がショボくなったおかげでさびれた中国感は増しているのだが。何たる皮肉…。

 

主人公であるRAZの出番も少ない。と言うか話の流れ的にはダスティン・ヌエンが主人公だったりする。RAZはオブザーバー的ポジションで最後のおいしい所だけ持っていく。そんな感じ。

 

物語の展開は、リー・クンが村を牛耳るホー組長の圧力に耐えがたきを耐え、忍び難きを忍びぬいた末、怒りの大爆発で大乱闘みたいな感じ。いわゆる功夫映画の黄金パターンで凄まじいほどのベタ展開。多少の驚きも用意されているが殆ど想像の範疇の出来事だったりする。もはや清々しいほどのベタ。しかし嫌いじゃないその読み筋展開。個人的には、むしろそういうのが素敵に感じたりする。

 

この映画で一番印象に残っているのは決めのどや顔だった。歌舞伎でいう所の見得を切るってやつ。武侠功夫映画でもこれって重要な要素だよね。滑稽にも感じるけどないと寂しいそんな感んじ。アクションの最後にする、やったで!どや!っていうこの感じはすごく香港武侠映画っぽい。どや顔重要。素敵。しかし日常生活でどや顔決めてる人を見ると引くんだけどね。不思議だね。ぎゃふん!

 

 

 しかし一番感動するのはどんな国の人間にも香港武侠映画の素晴らしさが伝わるというこの事実!作品の出来不出来はひとまず置いといて武侠映画フォロワーとしてぜひとも頑張って新たなる武侠映画を作っていただきたいと強く感じるわけであります!頑張れ!フォロワー達!

 

 

 前作の感想はこちら。

g029.hatenablog.com

 

 

 

「エンド・オブ・キングダム」(2016)ジェラルド・バトラー無双再び。

ホワイトハウスと言う限定されたシチュエーションからもっと大きなフィールドへ。舞台を、もとい戦場をロンドンに替えた脳筋アクションの続編。今度も救いがたいほどあほな話。褒め言葉としては…それしか思い浮かばないな(笑)。

 

前作の完全なる続編。イギリス首相の急死を受けて先進国首脳が葬儀のためロンドンに集結する。その中にはアメリカ合衆国大統領とその警護官マイク・バニングジェラルド・バトラー)の姿もあった。しかしそれはアメリカに恨みを抱くテロ組織の巧妙に仕掛けられた罠であった。ロンドンに集結した各国首脳に迫る危機。その魔の手はアメリカ合衆国大統領にも向けられる。バニングはそれに立ち向かうが…みたいな99分のお話。

 

少年漫画の鉄則としてシリーズが進むにつれて敵も味方もその持っている能力がどんどんインフレする、と言うのがある。本作もまさにそんな感じ。規模、人、ドンパチ度が前作よりも確実にスケールアップしている。さらに言うならば主人公の戦闘能力、その周りのモブキャラ達のあほさ加減、設定のザルさもスケールアップしている。おいおい…。みたいな感じなのだ。もはや突っ込み所しかない内容で、正しい鑑賞法としては画面に延々と突っ込みを入れまくって楽しむというのが多々しい見方なのかもしれない。作品はシリアスタッチなのだが、その内容はもはやギャグ映画だ。もはや笑うしかない。前作でも感じたんですが車田正美イズム*1全開な作りになっている。時と状況と見ている人によっては最高に楽しい映画だろうし、最悪に最低な映画にもなりえる、人を選ぶ映画と思われる。因みに私は前者の方だったりする。

 

何ともストレートで1本道なお話で、最後まで想像通り物語は進行していく。まあこの映画にストーリー的な驚きは必要ないので問題はない。とにかくジェラルド・バトラーの無双っぷりに酔いしれるための映画と言える。が、あまりの無双っぷり、と言うかあまりのキリング・マシーンぶりに正直かなり引く所も多々ある。どっちが悪者と突っ込みたくなるような暴走ぶり。暴力を行使する人間および組織の正邪の判別とは非常に曖昧なものだと再認識させられる。

 

脳筋なアクションドンパチ映画なのだが、皮肉に満ちた映画だ。作中で復讐と言う物は執拗で絶対的な力を持つ、とテロ首謀者が語り、それに対してアメリカ合衆国大統領は、批判せず勇気をを与える。相手を想い、大切な人に心から尽くす。人にしてもらいたいと思う事を人にせよと息子に教えていると語る。その割には結局は復讐の倍返し…。映画の結末はさらに皮肉と矛盾を感じずにはいられない。作中でも語られていたが「最悪なのは何もしない事」なのだとこの映画は結論付け肯定している。手を汚さない傍観者には成功も失敗もなく、それについて語る資格はないと言いきるその姿勢は、いかにもアメリカ的な発想だなと感じた。まあある意味正論では有るのだが大抵最悪の方向に進んでるぜor倍返しな世界には平和は来ないよと、意図的にそういう風に感じさせるよう構成されてるのは感心した。脳筋アクションだけど。

 

 

 

 ジェラルドバトラーの無双ぶりに血肉湧き踊る作品であることは間違いない。

 

 

g029.hatenablog.com

 BDのパッケージの絵が全く同じっていうのは世間的にはOKなのか?ぎゃふん。

 

 

 

*1:真面目にやればやるほど笑える物語

「エンド・オブ・ホワイトハウス」(2013)現代版一人300…レオニダス再び。

ホワイトハウス・ダウン」とモロ被りの題材。あっちはどことなくコミカルタッチだったけれどこっちはシリアスタッチ。だだしベクトルは同じ方向を目指いしている。

突っ込み所満載のお馬鹿な方向である…。もはや笑うしかない。

 

大統領夫人を不慮の事故で死なせてしまった過去を持つ主人公マイク・バニングジェラルド・バトラー)が北朝鮮系テロリストとホワイトハウスを舞台に大暴れ無双する脳筋なアクション1本勝負な120分のお話。

 

ジェラルド・バトラーと言うと世間ではオペラ座の怪人の人なのかもしれない。しかし私の中では300の人、ガチムキのレオダニス閣下その人という印象しかない。本作はそんな私の印象を損なわない素敵な脳筋アクション映画となっていた。主人子であるジェラルド・バトラーは、まあとにかく強い。凄く強い。もはや手が付けられないくらい強いのである。まさに現代に降臨した1人300。生き人神レオニダスもといジェラルド・バトラーなのである。的確にハンドガンで次々とヘッドショットを決める様はもはや人の領域を軽く超えている。よくバッタバッタと人をなぎ倒すとか言う表現があるが正にそれ。迷うことなく疑うことなく、ただただその強さに酔いしれるのが正しい視聴法のような気がする。…いや、突っ込みまくってもかなり面白い映画ではある。シリアスタッチな作風なものの冷静に見るとWHY?しかない。設定がザル過ぎて突っ込み所しかない。真面目にやればやるほどギャグにしか見えない感じの映画だが、無理無茶無駄な所が面白いという映画だと思うのであまり野暮な事は言わない方が良いのだ。ある意味、車田正美イズム*1を継承している作品である。

 

ホワイトハウス・ダウン」と同じく基本はダイ・ハードの系譜の作品なのだけれど「ホワイトハウス・ダウン」が過去のアクション映画の物語性のエッセンスを抽出しようと試みていたのに対してこちらはより主人公のヒロイックさに焦点を当てている。見ていて連想したのは「コナン・ザ・グレート」だとか「ランボー」だとかチャック・ノリスとかの超人性。セガールとかヴァンダムとかラングレンとかの系譜。いいよねそういうノリ。素敵だわ。

 

個人的には「ホワイトハウス・ダウン」の方が面白かったがこちらの方もかなり良かった。世間では本作の方が評価も興行成績も良かったようで続編もある。ジェラルド・バトラーの漢臭さ堪能できる1本だとは思うよ。

 

 

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 よく考えると子供を救出するっていう所も「ホワイトハウス・ダウン」と被ってんだよな。しかしオッサン野郎度が高過ぎィ…。ぎゃふん!

 

 

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 コンビの男前度はこっちの方が上だな。娘も可愛いし。

 

 

*1:真剣に書けば書くほどギャグにしか見えない症候群

「ホワイトハウス・ダウン」(2013)名は体を表す…。

 タイトルのまんまの内容。ダイレクトで分かりやすい。突っ込み所多し!好感度高し!

 

ローランド・エメリッヒ監督作品。はっきり言って嫌いじゃない。好きなのはユニソルことユニバーサルソルジャーとかインデペンデンス・デイとか…。あれ…あれ…それ位しか見てない…。ごめん。よく考えたらほとんど見てない。けど本当に嫌いじゃない。むしろ前述した映画は個人的には傑作認定してるくらい好き。でも評判の悪いGODZILLAからそれ以降の作品は全く見てない。何というか食指が伸びない題材が多いのでスルーしてきたのだが久々に本作を手に取ってしまった。

 

主人公のジョン・ケイルチャニング・テイタム)は元軍人で現在は議会警護官を務めているバツイチの子持ち。彼にはエミリーという名の10代前半くらいの娘がいるが現在その中はあまりよろしくない。この娘は政治オタクで現職大統領のジェームス・ソイヤー(ジェイミー・フォックス)の大ファンなオタク。ジョンはそんなエイミーとの関係を修復するため色々と奔走する。しかしそんなに簡単に事は進まない。大統領付き警護官への転職を希望して面接を受けるも過去のしがらみで上手くいかない。大統領付き警護官の面接失敗の失意の中、ジョンはエミリーとホワイトハウス見学ツアーに参加する。その時、ホワイトハウスで予期せぬ事態が発生する…みたいな131分のお話。

 

ローランド・エメリッヒと言うとパニック映画という印象が個人的に強い。まあインデペンデンス・デイしか見てないんですけどね。でも厭味抜きに面白い作品だった思うんだよインデペンデンス・デイ。何というか笑える展開が素敵だと思うし、インデペンデンス・デイでは切れたウィル・スミスがエイリアンをどつきまわす所なんか最高だと思う。抜けてる真面目な笑いっていうのは個人的に凄く重要なポイントで、そんな演出を恐れずにかます監督を信頼するし凄くリスペクトするわけなのだ。ベタって重要だ。そんなわけできっちりベタな話を作れるローランド・エメリッヒって監督は良いと思う。ユニソルとインデペンデンス・デイ作った時点でもう無条件に良い監督だと思う反面、外した時の破壊力も洒落にならないところもあり、微妙に手を出しづらい監督だったりする。本作は公開当時、類似作品「エンドオブホワイトハウス」と被ってることで結構話題になっていて気にはなっていた。とはいうものの当時は時間も精神的な余裕もなくスルーしていたのだがついに見てしまった。

 

結論から言うとこれは凄まじく面白かった。だってまんまダイ・ハードだもの。いや、まんまと言うと語弊がある。ダイ・ハードでありリーサルウェポンでありエアフォース・ワンでありザ・ロックだった。個人的に好きな映画のチャンポンで想像を軽く超えてきた。何たるミクスチャー!何つーか、ローランド・エメリッヒのアクション映画愛が大爆発した映画だった。特にエメリッヒさんダイ・ハードが好きなんだろうなという内容だった。主人公が最終的に白いランニング姿になった時は思わず吹き出してしまった。まんまじゃねーかよと。ジョン・マクラーレン再びである。軽妙な掛け合いとか、けれんみ溢れるアクションとか凄く良い。突っ込み所が多いのも非常に良い。個人的にツボで凄く楽しめた。

 

興行的には振るわなかったそうで「エンド・オブ~」のように続編はなさそう。まあ突っ込み所やあほすぎる登場人物が多かったからなぁ…。個人的にはこっちの方が面白かったので残念である。チャニング・テイタムジェイミー・フォックスのコンビは相当格好良いと思ったのだが…。

 

 

ちなみに一番印象に残っている場面は、娘のあまりのオタクっぷりに若干引いた主人公が娘の身を案じて「お前、学校に友達いる?」って尋ねたところが凄くほっこりした。あと娘が可愛い。確かに嫌われたくない。

 

「時計じかけのオレンジ」(1971)破壊衝動の極み。

過去の名作と言う物を殆ど見ていない。好物は最後にとっておくタイプだったりするので正直やったぜと思っている。死ぬまでには色々みたいね。

 

スタンリー・キューブリック監督作品はあんまり見ていない。「博士の異常な愛情」とか「2001年宇宙の旅」とか「フルメタル・ジャケット」だとかそんくらいしか見てない。ただその作品はどれもこれもとんがっている印象は受けている。特徴的なのは異常な性格のキャラクターが結構登場するような気がする。個人に好きなのは「フルメタル・ジャケット」でハートマン軍曹とほほえみデブ。「まるでそびえ立つくそだ」とかキャッチーな名言も多くて当時の私の心に突き刺さった。というか今も突き刺さったままだ。故にその内この監督の作品を全部見てやろうと思っていたのだが何となく億劫になって先延ばしにしてきた。しかしもうそろそろ見とかないと多分死ぬまで見ないなと思い、まだ見ていない作品の中で一番見たい本作を視聴したわけなのだ。因みに原作の方の小説は読んではいない。

 

物語は主人公マルコム・マクダウェル演じるところのアレックスの一人称で語られるスタイルになっており、近未来のロンドンを舞台にその悪行の数々とその後の顛末が語られる。ディストピアな映画の137分。

 

主人公のアレックスは若きクズである。これが清々しいまでのクズなのだ。破壊衝動に抑制がかけられないタイプの人間で暴力的衝動とか性的衝動とか本能の赴くままに生きているクズだ。モーレツなクズだ。若さゆえの…的なレベルではないその悪行は次第に過激になっていき、結果的に殺人の罪でお縄になり収監されることとなる。結果は懲役14年の禁固刑だった。しかし、したたかで邪悪なアレックスは「ルドヴィコ療法」なる新しい受刑者更生プログラムを受けることによって刑期の短縮の機会を得ようとする。新療法は一種の洗脳で暴力や性的衝動を生理的に受け付けないような体質にするという荒業なのだが療法は成功しアレックスは社会復帰するのだが…みたいなお話。

 

まず最初に感じたのは分かりにくい映画であるという事。とにかくその言葉が分かりにい。これナッドサッド言葉と呼ばれる造語で本作に出てくる、というかまみれなのだがこれがもう意味不明な言葉なのだ。何の説明もなく投げっぱなし。ロシア語と英語ベースにした組み合わせのスラングらしいのだが理解不能である。話の流れで何となくこういう言葉を指すのかなぐらいの理解しか私には無理だった。がこれこそがこの作品の世界観なのかもしれぬ。世界は分けの分からんものという事を表してるのかもと思った。

 

とにかく不穏な世界である。1971年当時の人間が想像した近未来のロンドンなのだが今見てもそんなに違和感を感じない。未来と言うならば未来に見える。退廃的で耽美的な美術や小道具がいっそう不穏な世界を際立たせている。不気味だ。しかしよく考えるとこの映画の提示している閉塞感やら不穏な空気感は実は現実世界が常に抱える慢性的なものなのかもしれない。ほぼ半世紀前の作品を今見てもリアルに感じる事がその証明のような気がする。

 

しかし主人公は本当にクソのような性格をしている。1ミリも共感できない。もはや想像の範疇を超える悪党でどーしようもないのだが、それを取り巻く世界も大概だ。全体主義、管理社会の行き着く先を皮肉った挿話の数々は的確に人間世界の暗部をえぐってくる。踏み込んで内側からねじりこんで打ち込むスタイル。重い。

 

結局の所、何をしたって人間の本質は変わらないし、「目には目を、歯には歯を」の時代から変わってないし変われないじゃねーの人間。みたいなシニカルな波動を感じる傑作だと思いました。

 

 

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 作中で主人公が社会復帰後訪れた作家の家にいるマッチョの大男。ダース・ベイダーの中の人らしい…。ゴツイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ローグ・ワン」(2017)ジェダイ無き時代の理力に導かれない野郎ども。

正直SWに深い思い入れはない。けれどやるとなると見たくなる。

故に今更ながら見てしまった。

 

私がSWで最初にイメージするのはルークではなくアナキン、もといダース・ベイダ—だったりする。正直、ダース・ベイダーと言うのは凄い発明だと思う。その黒光りしたメタリック調のスタイリッシュなルックスだったり、シューコ~シューコ~言う呼吸音だったり、もう全てが暴力的魅力に満ち満ちてる。帝国と同盟のドンパチよりもこのシスの暗黒卿の一挙手一投足の方が興味の対象になる人の方が確実に多いと思う。個人的見解ですがSWと言うのは宇宙を股に掛けた、壮大な命を賭けた親子喧嘩の物語であり、帝国だの同盟などというものは添え物に過ぎないのではないかと思っている。映画のⅣ~Ⅵというのはまさにその物語だった。Ⅰ~Ⅲというのはその父をクローズアップした作品で、新しいⅦ~というのは次世代の物語という事なんだろうと勝手に思っている。

 

スピンオフ作品の本作は時系列的にはⅢ以降、Ⅳ直前の物語にあたるらしい。

 デススターという名の宇宙要塞の設計図を巡っての帝国と同盟の攻防を描く133分。

 

喧嘩はしないが本作も親子ものだった。父と息子ではなく父と娘だが。良くも悪くもこれ以降も、この親子ものと言う呪縛からこのシリーズは逃れられることができないかもしれない。まあ話が面白ければいいんですが。

 

で、結論ありきで語るスタイルなんで結論から言うと微妙であった。うーん。方々での評判が良すぎたので面白さのハードルが相当上がってしまったかもしれない。つまらなくはないが想像してたのより面白い分けでもなかった。正直、微妙な感じだった。

 

フォースに導かれない者達のSW。そんな感じのお話。幼い頃に生き別れた父と娘の話を主軸に帝国と同盟のドンパチを描くわけなんですが話に既視感をバリバリ感じます。斬新さは皆無。予定調和な話でほぼ想像通りに話が進んで終わる。いい意味でも悪い意味でも裏切られることなく終わる。うむ。安定感重視で驚きはない感じ。

かといって全くつまらない分けでもなく話は終盤盛り上がる。デススターの設計図を巡って同盟側の決死隊が帝国の惑星に設計図の奪取を試みる件は手に汗を握る。

 

前評判を聞いてなかったら普通に面白いと言えたかもしれない。残念無念である。見てない作品の情報は極力控えよう…。

 

本作で意外だったのが主人公の父役のマッツ・ミケルセン!悪役でない!いい人の役で出てる!凄く好きな俳優なのだが悪役顔で悪役のイメージが非常に強い*1。007の奴とか印象深い。けど本作は主人公の父親役で100%いい人の役だった。やったぜミケルセン!

 

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話は変わりますがミケルセンって佐々木蔵之介に似てないですか?似てないですか?

 という事は佐々木蔵之介も好きなのか?あんまり気にしていなかったが…。

 

後、良かったのは座頭市ドニー・イェンさん。ジェダイにあこがれる盲目の剣士役で無双してる。ジェダイではないが尋常じゃない強さ。というかこのレベルでジェダイになれないって…ジェダイって…ダース・ベイダーどんだけ化け物なんだちゅー比較対象キャラって話ですよ。で、作中後半登場したベイダーは超無双するという展開は素晴らしいと思った。でもそこがこの作品のピークだったかな。

 

SWと言う縛りがあるのでそのシリーズの色に準じた作品になるのは仕方がない。けど、スピンオフ作品なのでもう少しはっちゃけた筋書きでもいいような気がする。個人的にはそんな作品が見たかった。ような気がする。ぎゃふん。

 

  K-2SOのデザインはブリキのロボット感があって素敵だなと感じた。

*1:100%個人的偏見

「チャッピー」(2015)スタイリッシュなロボコップ。

チャッピーと聞いて真っ先に思い浮かんだのが、ながいけんの「チャッピーとゆかいな下僕ども」とか言う漫画だったりする。私はそんな人間だ。

 

ニール・ベルカンプ監督作品「チャッピー」。この監督の作品は好きで過去2作も見ている。本作も楽しみにしていたのだがタイミングや時期を逸してこれまでスルーしてきたが、今更ながらやっと見た。第1作目の時にも感じたのだがこの監督の作品からは私が愛してやまない「ロボコップ」の影響を強く感じる。本作はモロにニール・ベルカンプ風の「ロボコップ」だった。

 

物語の舞台は2016年の南アフリカヨハネスブルグ。街は重犯罪が多発する修羅の街。治安悪化の抑制を図るために当局はロボット警官「ドロイド」を配備し、治安維持を図っていた。物語はそのロボット警官の一体であるNO.22がAIを得て自我を持ち、「チャッピー」と名付けられその後に至るまでの顛末の120分のお話。

 

チャッピーは見た目が相当男前。「アップルシード」のブリアレオスと「パトレイバー」のイングラムを足して2で割ったような感じ。完全に影響下でしょう。瞳はドットの四角で、それもなんだか間が抜けた感じで可愛い。このチャッピーが自我を得て成長する過程を主軸として、貧富の格差のが激しいヨハネスブルグのヒャッハー達のしのぎとロボット開発者達感情の軋轢が交差する内容になっている。役者も豪華でヒュー・ジャックマンとかシガニー・ウィーヴァーとかが出てる。特にヒュー・ジャックマンが演じる軍人上がりのロボットエンジニアは良かった。人間クズを好演している。うん、ナイスなまでのクズ。

 

私見ですがニール・ベルカンプポール・バーホーベンの完全後継者と認識している。バーホーベンがエロ・グロ・バイオレンスとするならば、ベルカンプはエロではなくバカが入る様に思う。バカ・グロ・バイオレンスが基本路線であり本作もそんな感じ。狙ってバカなのか真面目にやってバカなのかは謎だが、それが最大の魅力だったりする。

 

本作も特に物語の中盤から後半は?????????となるほどバカみたいな設定だったり突っ込み所満載の内容だったりする。正直、いろいろ破綻してるし粗が目立つ。ここら辺の所を看過できるかどうかで本作の評価が決まるような気がするが、個人的にその馬鹿さは嫌いになれない。ただ第1作目の「第9地区」と比べると作を重ねる事に話の筋が劣化しているような気がする。うーん。困ったもんである。そこらへんの所は次回作に改善を期待したい。

 

とは言うものの、個人的には十分に楽しめた。特に中盤から後半。突っ込み所満載ながら考えさせられるところ多かった。

魂とか心とか人格とか。

視聴者は純粋無垢でタブーの無いチャッピーを通してヨハネスブルグの様々な人間を見ることとなる。その人間達は大抵醜い。ただひたすらに悪事を働く輩。欲求の為に暴走するエンジニア。出世欲に駆られ妬みで事を起こす野蛮人等々…。

デフォルメされ突き抜けた登場人物たちは血の通った命を持った人間であるが、皆、欲が深く邪悪だ。肉体を持たぬロボットであるチャッピーのみが純粋無垢な心を持っていると言う皮肉。チャッピーとの関係性で母性だったり父性だったり自己犠牲を覚えるヒャッハー達の件とかも人に救いを感じさせる話の反面、そういった環境を作れない社会に対する痛烈な皮肉も感じる。

 

某映画では「マナーが人を作る」と問うていたが、ニール・ベルカンプは第一作目の「第九地区」から一貫して「環境が人を作る」と手垢がついたお題目を命題にしている節がある。本作はロボットを通じて真正面からそれを描き切った作品ではないだろうか。

 

 

しかしオチの件の人格転移&人格複製の件は看過できないし色んな意味で納得もできませんが…。ぎゃふん。

 

 

 

「プリースト」(2011)超絶に消化不良感が半端ない…

シチュエーションと雰囲気は好み。映像は結構豪華でお金かかってそう。物語は凡庸。映画としては…何とも言えない出来だった。色んなものが圧倒的に足りない。

 

粗筋は…

殆ど進撃の巨人だったりする。巨人を吸血鬼に替えただけ。

歴史改変の物語。吸血鬼が存在するIfの世界。太古の昔より続いた吸血鬼との戦争に「プリースト」と呼ばれる対吸血鬼用兵士の投入で人類は勝利した。が その力故に疎まれたプリースト達は解散させられ町の底辺で生きることとなる。平和を勝ち得た人類は高い防壁に囲われたシティと呼ばれる都市を建設し教会の統治の元、平和を謳歌していた。教会の司祭で伝説の戦士と名高いプリースト(ポール・ペタニー)は、ある日、ヒックス(キャム・ギガンデット)という青年から、兄一家が吸血鬼に襲われ、姪のルーシー(リリー・コリンズ)が連れ去られたことを知らされる。プリーストは再び人類に危機が迫っていることを協会に報告するが信じてもらえず、掟を破りヒックスとともにルーシー救出のための旅に出る。吸血鬼は絶滅したと主張する教会の妨害を受けながらも、プリーストは吸血鬼の巣窟へと向かうのだが…という87分のお話。

 

そんでもって感想…

まず初めに私はこの映画は嫌いじゃない。嫌いじゃないのだがこれじゃない。これじゃない感が凄く強い。何というか素材は良いのに味が残念みたいな感じの料理が出てきたときのような何とも言えぬ感情。この手のB級の匂いのする作品は好物なんですけどね。

 

監督はスコット・スチュワート。「レギオン」の監督で主演はポール・ベタニー。アイアンマンのスーツの声の人。「レギオン」と監督、主演とも一緒である。

 

g029.hatenablog.com

 

韓国の漫画が原作だそうなのだが私はよく知らない。ただその雰囲気は非常に好み。平野耕太の「ヘルシングイスカリオテ機関的な感じ。アンデルセンとか出てきそうな感じは凄まじく良い。

 

この映画、冒頭にも書いたが細かい所が結構しっかり作りこまれてる。

世界観も雰囲気も良い。背景のCGとかも良い。

吸血鬼も人外なクトゥルフチックorエイリアンチックで良い。ヌメヌメ感のある異形な化け物で従来の吸血鬼と全く違い良い。

テリーマンヨロシクチックに額に十字架マークがあるプリーストorプリーステスも出オチの感は否めないがそれもまた素敵。

ルーシー役のフィル・コリンズの娘リリー・コリンズもセクシーで可愛い。良い。

プリーストが銃器を使用してはいけないとか、妻帯してはいけないとか戒律的な縛りがあり、何らかの人体強化をされ超人的な戦闘能力を持っているという設定も良い。

 

そんな感じで結構心の琴線に触れる要素が満載にもかかわらず、見終わった後何とも言えない残念な気分になってしまう困った映画だ。原因としては、語りたい内容に対して決定的に時間が足りないところ。良く言えばスピーディという事なんだろうけど、早けりゃ何でもいいという分けでは無いという事をこの映画を見て痛感した。やっぱし話の強弱とか緩急は必要だよ。130キロ後半のストレートをストライクゾーンに投げ込み続けたら、いかに切れが良くても撃ち込まれますよ。ましてやそんな剛速球って作品ではないんだから。しかも時間の関係か山場のラスボスとの対決が…ショボすぎるー。うーん。完投能力がなかったんだなぁ。力尽きた感が半端ねぇっす。まるで既視感…この監督と主演の前作を思い起こさずにはいられなかった…何ともショボい。そんなこんなで最終的に前述のような気分になり半端ない消化不良感を見た後に感じました。

 

ただ一貫してるなーと感心させられたのが映画のテーマ。前作「レギオン」も信仰がテーマだったが今作も引き続きそれがテーマになっている。真の信仰心とは?本当に正しい行いとは何なのか?というものを問いかけるような内容になっている。「教会の教えが神の教え」と作中では洗脳するかのように唱えつづけるが、時にはそれを真っ向否定することも時には必要ですよと問いかける。手段を目的にするなという事か。体制が敵なのではなく、それを利用している何かが敵なのだ。パンクでロックンロールの魂が注入された作品と言える。内容は無いけどね。ぎゃふん。

 

 

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散々書きましたが本当に好みの作品ではある。いい感じなボンクラテイストで。あと少しズレていれば傑作になったかもしれない。惜しい。