真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

正直こんなおばさんに無言でファインダー向けられたら相当怖い「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」(2013)

ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル監督作品

 

正直、写真の良し悪しが分かるような人間ではない。残念ながらそういった感性は皆無である。もっと言うと絵画の良し悪しも正直分からん。色彩感覚的な事も、技術的な事もさっぱりである。多分説明されてもすぐ忘れる。多分5秒ぐらいしか覚えていないであろう。そういう自信はある。威張って言うようなことではないが、間違いないのである。とりあえず私はそんな程度の人間だという事を理解していただきたい。

 

本題に入る。本作は、ヴィヴィアン・マイヤーなる写真家に焦点を当てたドキュメンタリー映画である。もっとも写真家と言ってもこのヴィヴィアン・マイヤーなる人物は、生前は全く作品を発表していない。というかその作品は全て死後に公開されたものである。本作はその公開に至る顛末と、そこから始まるヴィヴィアン・マイヤーなる人物の足跡をたどるドキュメントである。

 

2007年、本作の監督の一人であるジョン・マルーフが歴史の資料にと、オークションで大量の写真のネガフィルムを手に入れたところから話は始まる。その写真の出来の良さに驚き、それを確かめるためブログに一部をアップしたところ、熱狂的な賛辞が次々と寄せられる。これにメディアも乗っかって絶賛。調子に乗って写真集を発売したら全米売り上げNO1を記録。展覧会を開けば押し寄せる群衆。撮影者の名は、ヴィヴィアン・マイヤー。すでに故人になっており、職業は元乳母。15万枚以上の作品を残しながら生前には公表することはなかった…。なぜ?…本作はその何故?を追っていく映画である。

 

この映画のトレーラーをテレビでたまたま見たのだけれど、これが良い感じだった。素性のよくわからない人間を追跡するのって結構好きなのだ。しかもその人物が才能ある人間でミステリアスな感じだともう辛抱たまらんね。因みにこの件の人物ヴィヴィアン・マイヤーは見た目は完全におばさんである。しかも芸術家風ではなく変人系な雰囲気が漂っている。特にその目。すげぇ怖い。冒頭の話ではないが、私に写真の良し悪しは分からない。技術的な事もわからない。が、この人の撮った写真は確かに良い。良いと思える。いい悪いじゃなくて、ぐっとくる感じがある。素人の撮ったものでは感じない、プロが撮った写真でもそんなに感じたことはないのだが、確かにグッとくるものがあるのだ。いや、プロが撮ったのでもグッとくることはあるけど。それくらい良いのだ。まあ作中では写真のプロの人たちの評論もあって、技術的な事やら構図の事やらで褒めているのでやはり才能は有ったのだろうと思う。私にはわからんが。才能が有り作品を数多く残したにもかかわらず、世間公表せずに没する。そんな芸術家っているのだろうか。…まあ結構いるのだろう。生前有名でなくても死後その才能が認められ有名になった芸術家というのは結構知っている。そういう人たちは、たいてい生前から、世間にはそれをアピールするもんなんだけどそれがないというのはどういう事なんだろう。そんな疑問を紐解くように本作はその人となりを手繰り寄せていく。そこには彼女の闇も垣間見えて、非常に興味深かった。結論的に言ってしまえば、ここで語られることは想像の域を出ない話ばかりでモヤモヤしたまま物語は終わる。何せ当人がもう亡くなってしまっている話だし、友人や親しい親類もほとんどおらず、本人が超内向的な人間だったみたいなので詳しいことが分かる人間がまるでいないのだ。よって彼女を知る数少ない人間たちの証言を基にした推論以上の事は提起されない。彼女を知る人間の証言が淡々と紹介されてい置くのだが、最終的に彼女の晩年はかなり経済的に困窮していたらしい。ごみ箱を漁り、生活していたエピソードなどを聞くと、ただただ、やるせなく切ない。死して名を残すことにどれだけの意味があるのか、正直今の私には分からない。何も残らぬよりは残した方が何となく意味はあるのだろうか?よく歴史に名を刻むとか、生きた証がとか言うけれど、正直死んだ後の名声や、功績などどうでも良くて、生きているその時間にどれだけ満足できるか?という事なのではないか。はたして彼女は満足できたのだろうか?何となくそんなことを考えさせられたそんな作品でした。

 

ヴィヴィアン・マイヤーを探して [DVD]

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Vivian Maier: Street Photographer

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 ちなみに私は今現在の自分の人生にこれっぽちも満足していない…。

ぎゃふん!!!!