真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

「ハンナ」(2011)野に解き放たれたその先は…。

その末路を想像せざるをえないラスト。一番悪いのは政府機関だけど親父が大概だぜ。どっちもそびえ立つ糞だ。そう思ってしまった。

 

物語の粗筋はこんな感じ。

フィンランドの雪山にその娘と父親は暮らしている。そこは電気も通っていない人里を離れた場所だ。そんな場所で父親は娘に自分の持っている知識や技術の全てを伝え生活していた。サバイバル技術。語学。社会の知識。そして対人戦闘術。「寝ているときも注意を切らすな」父の要求は全て要求の高いモノであったが娘はそれをクリアしてゆく。ある日、娘は父に言う。「外の世界へ行く用意は整った」娘の願いは外の世界へ出ていくことであった。父は娘に問う。外の世界に出ていきたいか?と。父は娘の前に発信機のスイッチを差し出した。「外に行きたければ押せ。しかし押したらマリッサを殺すか殺されるかだ」「時間をかけよく考えて決断しろ」と父は娘に言った。スイッチを受け取った娘は、父が狩りに出ている際にスイッチを押す。それに気づいた父は娘に言った。「ドイツのグリムの家で会おう」そう言って父は娘を残し山小屋を後にした。後に残された娘、ハンナの物語が始まる…。

 

そんでもって感想。

この映画を見た時に昔サンデーでやってた漫画「スプリガン」を思い出した。確かCOSMOSとか言うのがこの話に結構かぶってた気がする。

主人公である少女ハンナはシアーシャ・ローナンが演じている。私は全然知らない役者さんだった。「ラブリーボーン」に出ていた子らしいのだがそれ自体を見ていない。印象は白い。見た目が。役柄もあるのだろうが人として希薄な感じが凄い。親父役にはエリック・バナ。私の中では、常に困っている顔の役者の双璧のうちの一人。この人、何の役をやっていても困ったような顔に見える。元々はコメディアンなのにそういう印象が強い。因みに困った顔の双璧のもう一人はクライヴ・オーウェンだったりする。どっちがミッターマイヤーでロイエンタールかは個々の感性に任る。

 

結論から言うと本作は結構面白かった。所謂アクションスリラー映画で基本がしっかりしてる。筋も構成も流れもきっちりしてて好感が持てる。特にオープニングとエンディング。被せてきてるあたりに様式美を感じます。凄く良い。出演陣も豪華。エリック・バナが出演している時点で個人的には満足だが、ケイト・ブランシェットが敵役で出てる。もう大満足。話の内容は、閉ざされた世界で英才教育を受けた娘が外の世界へ旅立つ話であり、娘の自分探しの話である本作。…既視感が半端ない。こんな手垢のついた筋書きの話を沢山知っている気がするけど、映画でド直球でやるのはあんまし記憶にない。記憶にないだけかもしれないが…。

 

そんでもってネタバレ全開ストロングスタイルの感想。

感情を操作し、筋力を増強。遺伝子操作された子供たちを育成しての超兵士育成計画。計画廃案の証拠廃棄から、子供を救い育成から旅立ち。そんな背景を持つ父娘の関係と娘の自立の物語の顛末。概ね納得しているし満足しているし面白いと思うのだが、親父エリック・バナの二択発想に大分疑問を感じている。親父エリック・バナは戦闘工作のプロ、凄腕の元CIA工作員。組織の汚さ、怖さを知っている者の発想なのかもしれないが…。プロジェクト大本営の責任者を殺し追跡に終止符を打つという発想は理解できる。しかし発信機で所在を明かしてからの作戦開始というのはどうにも理解に苦しむ。隠密的に動いてヒットすることも可能なわけで、なぜこんな困難な作戦を実行しようとするのか?何の説明もない。暗殺対象を手の届く範囲におびき出すためとの解釈もできなくはない。しかしそれにしても生か死かという2択の発想は乱暴すぎやしないか?そもそも事を起こす必要があったのか?よく分からない。穏便に素性を隠し街に人に紛れることは作中のエリック・バナの技量なら可能のように思える。が、それを良しとしないのは狂信的に組織を恐れているのかそれとも娘に何か思う所があるゆえの試練なのか?そこらへんがよく分からなかった。

あと父娘を追跡する工作員がへっぽこ過ぎる。エリック・バナの力量を認め、恐れての追跡チームになぜその人選をしたのか意味が分からない。追跡組のリーダーはいかにもの奇天烈系の得体のしれない奴だが実際の腕前は大したことなく、単なる拷問好きサディストにしか見えなかった。エリック・バナを脅威と思っていたらこの人選は無いと思うのだがどうでしょう。

 

何と言うか余白の多い作品に感じた。というか余白が多すぎる気がする。親父の行動とかもう少し細かい所を丁寧に作中で描ければ傑作になり得たかもしれないような気がする。説明がちょっと少なすぎる。何とも惜しい作品だった。面白かっただけにね。

 

 面白いんだけど中古で500円で売っていた…。面白いんだけどな…。俺だけか…?ぎゃふん!