真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

「レヴェナント蘇えりし者」(2016)生きるという事…。

デカプリ悲願のオスカー獲得作。話は凡庸だけど画力が凄い。自然が凄い。しかしそんな事は関係なく復讐譚というのはどんなものであれ私の心の琴線に触れる。

 

ディカプリオ(面倒なのでデカプリと以後略す)と言うと結構な人気俳優で主演作も多い。しかし私はあまり見ていない。主演作に限ればただの一つも最初から最後まで見たことが無い。自分でも意外だったのだが、よくよく考えても見ていない。TVでやってるのを途中までとか途中からとかはあるものの何一つ通して見たことが無い。けれど嫌いなわけでもなく助演作に限って言えば「ギルバート・グレイブ」とか「クイック&デッド」とかは見ているし、その中でのデカプリには好印象を持っている。と言うわけで、主演デカプリ作品を初めて観きったった。

 

お話は復讐譚で実話を元にしたお話である。舞台は1820年代のアメリカ。毛皮の狩猟を生業とする商隊がネイティブ・アメリカンの襲撃を受け山に逃げ込むはめになるところから始まる。襲撃を逃れた一団は基地への帰投を図り、水路陸路のコース選択ででもめるものの陸路の山岳を抜けるコースを選択する。隊のガイドを務めるヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)はその際、偶然クマと遭遇、襲われて瀕死の重傷を負てしまう。負傷したグラスを連れて隊は進むがやがてそれが困難となってくる。隊の安全を優先させるため隊長であるアンドリュー・ヘンリー(ドーナル・グルーソン)は、もはや風前の灯と思われるグラスを置いて基地に戻ることを決定しグラスの最後を見届け、弔うように3人の志願者を残す。しかし残された三人のうちの一人ジョン・フィッツジェラルドトム・ハーディー)が他の二人がいない隙にグラスの殺害を試みるがグラスの息子ホーク(フォレスト・グッドラック)に見つかってしまう。グラスを助けようとしたホークをジムは返り討ちに殺してしまう。もう一人残ったジム(ウィル・ポーター)にそれを悟られるものの言いくるめ、グラスを置き去りにして基地へと戻っていた。瀕死のグラスはその一部始終をを見ていたが重傷のため身動きができず置き去りにされてしまう…。しかし強靭な意志と体力でグラスは死地を逃れることに成功し復讐を胸に抱いて息子を殺した宿敵の後を追跡する…みたいな、息子を殺された男の復讐劇を軸に西部開拓時代の大自然やら人々の軋轢による抗争やらの悲哀を描く156分のお話。

 

まず第一印象としてはデカプリ老けたなぁ、だった。初期の作品のイメージが強いためまだ若い感じがしてたんだけど、もう立派なおっさんだったことに驚いた。まあ当たり前の話なんだけど。私の中では日本の酒のCMに出てた頃の風貌の印象のままで止まっているのでちょっと驚いた。そりゃ私も老けるはずだわ…。

 

話的にはデカプリの復讐譚とは別の軸としてネイティブアメリカン対アメリカ人、ネイティブアメリカンの部族間の抗争という軸がある。フランス人も出てくるが彼らとはネイティブアメリカン達は争ってない。むしろ商談とかしてる。1815年の英米戦争の停戦によりアメリカは国内拡張路線を進んでおり、アメリカ人の西部進出、所謂アメリカ人による西部開拓が進んでいくわけだが、その中でのネイティブ・アメリカンとの衝突も作中で描かれている。血で血を洗う抗争な分けなんだが襲ってくるネイティブアメリカンの戦闘能力が結構高いことにビビる。音もなく忍びより音もなく弓で射殺される。これが怖い。大体が、ネイティブアメリカンを強制移住させるという暴挙に対しての反発であり、自業自得なのだが、狩られるものと言うのは「プレデター」的な恐怖で凄まじい。作中のアメリカ人たちは皆、ネイティブアメリカンのアリカラ族にビビっておりその戦闘能力の高さに対する恐怖の大きさがうかがえる。しかしそのネイティブアメリカンにしても一枚岩ではなく各部族での対立が作中でもうかがえる。結局の所、大小無数の対立が存在し混沌としている。そしてその全てに復讐とか憎悪と言う炎が宿っている所も怖い。負の感情の連鎖。加速度的に大きくなっていく復讐や報復。結構な感じで人間の芯の痛い所をえぐってくるお話で現代社会とリンクしてて、色々考えさせられる。ただ復讐と言う衝動は生きる動機にもなりえるようにも思う所が困ったとこなのだが…。

 

生きる。生き抜くという事は戦う事だ。本作の核心はそんなお題目だと感じる。しかしそれは戦い=争いではなく。生きる事こそ戦いだと問う。息をしろ、息をし続けろ。作中でそのフレーズを聞いた時そう感じた。本作の主人公であるグラスは最愛の息子を失い生きる術を亡くした。そして復讐にその命を生かされることになるのだが、物語の決幕にある決断をする。その答えが映画ならではのご都合主義とは思えない。最終的にその選択は思考放棄とか他人任せとか揶揄されるかもしれないが、思いを断ち切るという事もあらゆる葛藤を突き抜けた先の悟りの選択と言えるのではないだろうか。私はそう感じた。いや正直私には無理な選択だが。多分私なら、某映画のようにブギーマンになるだろう。ぎゃふん。

 

長い時間の映画なのだが個人的にはそれほど長く感じなかった。これは雄大な大自然の画力に寄る所が大きい。陳腐な言い回しなのだが自然の画が非常に良いのだ。山とか川とか風景がとにかく綺麗なのだ。サバイバルなアベンジャー的な話と対比する感じで穏やかで雄大、実に美しい。この映画を見て確信したのだがどうやら私は海よりも山の方が好きなんだという事に気が付いた。どーでもいいことなのだが個人的な発見だった。それだけども見た価値はあった。そう思う。

 

 

 その大怪我がそんな短期間で回復するかい!などと野暮な突っ込みはしてはいけない。デカプリはそういう性能なのだと信じてみるのが正しいと思う。