真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

「レイヤー・ケーキ」(2004)甘く見えるけど甘くない。

マシュー・ヴォーン初監督作品。本当はガイ・リッチーが撮るはずだったらしいのだがなんかごたごたがあって降板したらしい。結果はそれで良かったんじゃないか。これはなかなか傑作だった。

 

 名もなき主人公の麻薬デューラーを007以前のダニエル・クレイグが演じる。表向きは不動産屋、しかし裏では麻薬を捌き金を稼いでいる麻薬デューラーxxxx(ダニエル・ブレイク)。彼は自らにルールを定めておりそれを実行することによって裏社会を上手い事生き抜いてきた。彼は裏社会に骨を埋めるつもりはなく、自らに課した最後のルール「好調なうちに引退」を実行すべく、裏社会から足を洗う事を考えていた。しかし世の中そんな思い通りにいくはずもなく、彼は組織のボスから裏社会の大物の娘の捜索とMDMAの取引と言う二つの仕事を依頼される。簡単に見えた仕事は一筋縄ではいかず娘の捜索は難航し、MDMAの取引のブツはオランダのマフィアからの盗品と判明する。しかもMDMAの奪還と、強奪の報復の命を受けたオランダマフィアの殺し屋に狙われる羽目になる。そんな中、彼は組織のボスの思惑を知ることとなり…みたいな105分のお話。

 

本作を見て思うのはイギリスにおける麻薬に関する緩さだ。麻薬絶対ダメの国の住人で、酒もたばこもさほど必要に感じない私のような人間からすると想像もつかない世界だ。イギリスの薬事情は日本のそれとは違う事を痛感させられる。法はあれど緩いというのが実態のようでこんな映画も作られるのだろう。ある話によると煙草よりも薬の方が安い場合があるっていうんだから想像を絶するね。英国系のアーティストの記事を読んでいても必ずと言っていいほど薬の話が出てくるし、実際に緩いんだろう。全然羨ましくないけど。

 

話は裏稼業、麻薬デューラーのお話で登場人物はほとんど裏稼業の人間達でろくでもない。しかしそんなろくでもない人間達も組織とか裏社会のしがらみでもがく様は一般社会のそれとほとんど変わらず滑稽だ。ハイリスク・ハイリターンで手にするものは違えども、結局、無法の中にも法があるというのは何とも皮肉でもある。主人公本人も、自らにルールを架しているが、どんなことにも明確なルール、理が必要という事を感じさせる。多分この世に完璧な無法はないんだろうな。

 

薬やらそれにまつわる人間の思惑がこんがらがった話なのだが、最終的には一つに収束して綺麗にまとまっている。悪いことをするとそれなりのツケを払わないといけないよと言うラストも個人的には非常にツボで切なくていい。

 

罪には罰を。因果は応報せねばなりますまい。

 

 

 クレイグと言えば武闘派ボンドなのだが、くたびれたおっさんも十分魅力的でイケる。