真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

「保安官エヴァンスの嘘〜DEAD OR LOVE〜①」 多分、親父が諸悪の元凶だと思う。

週刊少年サンデー連載中、栗山ミヅキ作品。

 

肩ひじ張らないバカバカしいマンガが好きである。これはまさにそんな作品。

 

西部を舞台にしたコメディー。モテたい一心で銃の腕を磨き凄腕ガンマンとなった保安官エルモアエヴァンスの苦悩を描く。

 

「モテたい」幼少時からモテるために銃の腕を磨き、西部一の凄腕保安官になったエルモアエヴァンス。だが未だに年齢=彼女いない歴。その事実をひた隠し、西部の荒くれ者達と渡り合い、日々カッコをつけるみたいなお話。

 

モテんがために自己を研鑽し高めた挙句、自己設定した理想像から遠ざかるもどかしさを楽しむギャグマンガである。

 

ここでの自己設定とは女にモテたい、イチャイチャしたいという軟派なものなのだが、そこに行く過程でエヴァンスはカッコいい男=凄腕ガンマンと言う答えを導き出し、それになるべくモテの師匠、親父の教えを実践しそれになるのだが上手くいかない。

 

エヴァンスは表面は凄くカッコいい。その言動、立ち振る舞い、行動は計算されたカッコつけであり自己プロデュースが半端ない。しかしそんな自分の作り上げた仮面が己を苦しめることとなる。要は裏の無いあざとい言動も周りが勝手に裏があると解釈してしまうのだ。下心丸出しの言動も勝手に裏読みされて違う解釈をされ、結果的に女性と近づけず、硬派なカッコいい保安官像が強化されていくという面白さ。しかもそんなカッコいい保安官像を壊したくないエヴァンスの心の葛藤が凄く面白い。

 

モテたいがために銃の腕を磨き研鑽する。基本自分を磨くという方向性は間違っていない。しかし、モテるために最も必要なのは己を高める事ではなく、恥をかいてでも、いかに自分の気持ちを相手に伝えると言うコミュニケーション能力と打たれ強いハートの強さであると思う。

 

エヴァンスはモテ要素は尋常じゃなくある。と言うか作中でも相当モテている。実際の所、モテの扉は目の前にあり後は開くだけの状態の所までは来ている。しかしエヴァンスにはその扉を開く術がない。他者を引き付ける術は身に着けたものの、他者の懐に入る術は学んでいないのだ。

 

元凶はだれか?親父である。

 

エヴァンスは将来モテるのために幼少時からモテる技術の習得に励むのだが、このモテる技術の師匠が親父が問題のような気がする。親父の格言を胸にエヴァンスは行動するのだが、前述したように肝心金目の所は伝授されていないのだ。故に苦悩する。それが楽しいのだが、本当にエヴァンスが尊敬するほど親父はモテたのか?そんな疑念を考えるのも面白い作品だ。因みに私は親父はモテなかった男だと思っている。

 

ブコメと言うのは匙加減が難しく、軽すぎても引き込まれず、やり過ぎると引くという難しいジャンルだと思うが絶妙なかじ取りで今の所物語は進行している。モテそうな男が持てないというありがちな設定を西部激にぶち込むセンスも素敵で凄く面白い。このテンションがどこまで続くは分からないが今かなり気に入ってる作品である。

 

 親父の教えに背き、自分の意志で行動し始めた時に物語は結幕を迎えるのではないだろうか?ある意味「父親殺し」と言う神話性の高い物語のような気がする…が、最終的に親父のような親父になっても遺伝子の継続的な話で面白い…って、下らない事を考えれる面白い作品である。

 

ぎゃふん!!!