真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

「天涯無限 アルスラーン戦記16」完結したので簡潔に感想

30年。その内、実働過年は何年だ…?

 

まずは何はともあれ完結したことを祝福したい。ハラショー。

物語は未完よりも完結した方が良い。その意味ではめでたく喜ばしい。

好きな作品ならばなおさらである。死ぬ前に終わってよかった。安堵である。

内容は前回から続く最終決戦。ジェノサイド色が濃くなった前巻の引きの続きで案の定の大量殺戮展開でした。まあ予想道理の田中芳樹展開です…が。

 

結論から書くと相当面白くなかった。

 

展開自体は予想道理だしそこは問題ないのだがどうにもこうにも言葉に魂が感じられないのだ。これは由々しき問題である。この作者の売りはベタな展開でも切れ味鋭い文章で読者のハートを持っていく所に魅力がある…あったと思っていた。少なくともこの物語の第1部と呼ばれるものにはそれがあった。あったと思う。読み手である私の目が肥えたのか、作者の力量が衰えたのかは分からないが、この第2部、この最終巻にはそれが欠片も残っていないと感じるのは私だけだろうか…。多少の盛り上がりはあるものの話を必死にたたむ作業的な流れ。歴戦の勇士たちが、仇敵、宿敵が冥府に手を取り行進する予定地調和の物語は書き手側の熱量無くして成立しないと思うのだが、そこに熱量は全く感じないのだな、これが。ただ必死に話を終えようとする書き手の姿が浮かぶのみ…。残念である。故にラストの「天涯無限」の寓話も何だか虚しすぎた。駆け足過ぎてそこに至る感動まで読者の心が追いつかないのだ。と言うか普通に無理だろ。…そこにはたたみ切ったという感慨以外何も無い…。ように感じるのは私だけか…。

 

その昔、菊池秀行さんの作品の後書きで「作品は完結するが物語は完結しても続くもの」と言う文章を読んで激しく同意した記憶がある。今まで私に突き刺さった作品群は確かにそういう作品ばかりだからだ。きっとそういった作品を傑作と呼ぶのだと個人的に思っている。そう意味では今作は私の中で傑作では無くなってしまった。残念な事だがこの作品の物語のその後を想像、妄想することはこの先多分ないだろう。ただ、もし中断の期間が無く、第一部の勢いと熱量で最後まで完走していたら、という妄想はこの先ずっと考え続ける事は間違いないだろう…。

 

色々思う事は多いけど、それでも完結したことは心の底から祝福したい…。

ハラショー!

畜生‼

ぎゃふん!!!

 

 

天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

 

 中世ペルシャアーサー王的な物語もこれにて終わり。宝剣ルクナバートの存在故に

ジョン・ブアマンの「エクスカリバー」的なエンドになるんだろうと思ってから早20数年…。この物語の一番虚しい所は主人公たるアルスラーンの無欲過ぎる業だろう。そんな高潔にして真摯で多分童貞な若き王がなぜこんな目に…。ただただ悲しいわ。せめてそのラストなら銀英伝におけるキルヒアイスの死と同等の熱量で書いて欲しかった。だってあまりにも不憫すぎるわ。そう思うのは私だけだろうか?