真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

ゾンビと列車と逃避行/新感染 ファイナル・エクスプレス(2017)

 

新感染 ファイナル・エクスプレス [Blu-ray]

新感染 ファイナル・エクスプレス [Blu-ray]

 

 

「ゾンビとパンデミックは表裏一体で基本やることは一緒で死地からの脱出。すなわちエクソダスだす…」って皆同じような話になってしまう問題があるのではと私は思った。

「そうなると話しの肝は、誰が、何で、どこへ行くかが重要になる訳で…」と一人私は頭の中で反芻した…。

 

本作はパンデミックするゾンビから逃れるべく、親子関係が芳しくない主人公父娘が旅の行きずりを巻き込みつつ、韓国高速鉄道Ktxで生存可能な安全圏の釜山までの決死の逃避行の物語となるのだがこれが本当に面白かった。利己的かつ自己中な親父の成長譚としても面白いし、単純にアクションホラーとしてもすぐれているように私は感じた。要所に張り巡らされた伏線を回収する様も子気味いいし、演者さん達も良い。特にマ・ドンソクさんが秀逸である。「超格好良い」のである。「でもあんなガタイの良い一般人は居ないよな」とも私は思うが「そんなことを言うのは野暮だぜ」という思想の持ち主なためそれはそれでよしとする。

 

個人的にはKtx車内での3人パーティーを組み、ゾンビの溢れる客室を突破する場面のマ・ドンソクさんの勇姿は至高であり本作のハイライトの一つであるだろうと私は考える。

「あかん好き。イカス!」と私は心の中で吼えた。

その勇姿を拝めただけでも本作に価値はあったように私は思う。

 

ラストの歌の件も良い。最後の最後でこの世の地獄の中にわずかに希望と救いがあるその構成は実ににくく、実に良い。

 

「レベル高ぇな韓国映画」私は思った。

 

本作を見てやたら既視感があったのだが、はたっと私は思い当たった。

芥川龍之介蜘蛛の糸だ。

「まあ人は容易くカンダタになるもんだし、蜘蛛の糸は容易く切れるものだわなぁ…」どこの世界でも一緒である。

 

全く困ったものだと私は思った。