真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

あの人に似ている…。/殺人の追憶(2003)

 

殺人の追憶 [Blu-ray]

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かねてより作品の出来はかなり高いと方々で聞いていたのだが、なんだか尻込みして観ずにいた。と言うのもずいぶん前に韓国映画の傑作と言う前評判で「シュリ」を観たのだが私には1ミリもかすらず正直きつかった。その記憶が拭えず、前評判がどんなに良くとも韓国映画を長いこと敬遠していたのだが、どうにも気になって観てしまった。そしたらこれが想像以上に面白かったので驚いた。韓国映画、クオリティ高いな…。

食わず嫌いは損をするのを実感し感想をここに記す。

内容は韓国の未解決連続殺人事件、花城連続殺人事件を元にした戯曲の映画化であるらしい。131分の陰鬱な捜査劇である。なんとも怖い物語である。まず、その時代背景、軍事政権下という事が怖い。1980年代後半、わずか40年前までお隣さんはそんな政治体制だったという事実が怖い。で件の連続強姦殺人事件である。事件自体も怖いのだがそれを追跡する警察が怖いのだ。杜撰な組織。杜撰な捜査。そして目も当てられない行過ぎた捜査…典型的な権力の暴走である。怖い。月並みで稚拙だが怖い。法と暴力が杜撰さで結びつく負のオーバードライブ。正義なんかありゃしねぇ。報道機関も無法が過ぎる。怖え。時代といえばそれまでだが、正義とか倫理ってなんだろうと考えさせられる。そしてそのラストに至るまで、不穏な空気と場の行き詰まり感やらで、じわじわする怖さが続く。で、結局、無法の限りを尽くしても捕まえられないのがなにより怖い。暗く陰鬱で時として愚かしくてやるせない物語である。最後まで救いは無い。最後の残るのは、杜撰な警察組織に対する空しさと犯人に対する憤り、市井に未だに潜み続けている犯人への恐怖である。やはり怖い作品である。

しかし、しかしである。私は何よりソン・ガンホの相方キム・サンギョンアンジャッシュの渡部にしか見えないのが怖い!いや、より正確に言うならば上位互換機だ!!!…って別にそれはいいのだが、もう私にはどうやってもキム・サンギョンアンジャッシュ渡部にしか見ないのだ…。何をやってもアンジャッシュ渡部に見える…。きっと見返すたびに、いつすれ違いの掛け違いコントが始まるのかとどきどきしてしまうことだろう…。…うーむ、怖い…。全く困ったもんである。

 

これを観終わった直後にこの事件の犯人が特定されていたとの情報を知った。この映画が公開された当時にはもう別件で捕まっていたらしい。それが救いになるかどうかは分からないが、この映画を見終わった後の怖さの一つが消失したのだけは確かだろう…。しかし怖い。アンジャッシュ渡部。困ったもんである。