「薄いんじゃない? 」
ジャン=ピエール・ジュネというと代表作はアメリになるのかもしれない。
しかし私はそれを見ていないので何とも言えない。
ただ彼の初期作品「デリカッテセン」と「ロストチルドレン」は見ていて面白いと感じた記憶が私にはある。
特に「ロストチルドレン」に私はやられた。
その独特などぎついブラックユーモアに私は痺れた。
しかしそれ故、マスに向けての作品は厳しいのではという印象を持っていたのだが、作品によって出力調整できる大人な監督だったという事を、アメリがヒットした時に私は感じた。
私は観てはいないのだけど…。
本作は、地雷と銃によって幼年期に父親を、大人になってから自身の全て、職と住処を失った主人公がその原因を作った軍需企業を仲間とともに天誅する105分の復讐劇である。
ど底辺のイカレタた異能者達が武器商人のブルジョア達に天誅を喰らわす物語なのだが、私にはなんとも消化不良気味であった。
「アメリ」以降の作品なのでどう作風が変化したのだろうと思っていたのだが、基本変わりなく、そのことは杞憂に過ぎなかった。
凄惨かつ陰惨な感じになりそうな内容を、持ち前のブラックユーモアで軽妙かつケレンミ溢れるテンポの小気味良い作品に仕上げている。
が、正直破壊力に欠けているのだ。
何か物足りないのである。
悪徳武器商人達を清貧な異能者の主人公達が懲らしめるという勧善懲悪物なのだが正直、痛快さが不足しているように私は感じた。
それは悪徳武器商人たちが決して完全なる悪では無いという所が原因なのかもしれない。
日常世界と地続きの問題を意識させた、意図した作りなのかも知れないが、そのせいで正直いまいち乗り切れないのだ。
それが味なのは分かるが私は乗れなかった。
悪の養分が足りない…。
主人公サイドが超絶有能一芸フリークス過ぎるのもパワーバランス的にどうかと思った。
もう少しフラットなポンコツ人間がたくさん居た方が面白かったような気がする。
逆に主人公サイドがそこまで異能な軍団ならば、もっと強大な敵に立ち向かわなくてはカタルシスが足りないのではないかと私は思ってしまった。