「なんと言うことだ…」
本屋でその新刊を目にした時、私は一人、思わずつぶやいた。
「なんと言うことだ…」
その本を手にして裏表紙の帯の文字を読み、本屋で思わずつぶやいてしまった…。
そこには「2020年完結予定」との文字がしっかり書いてあったのだ。
「本気か?正気か?マジなのか?」
不敬を承知で私は呟いていしまった…。
「ひょっとして…田中芳樹氏、死んでしまうのではなかろうか…」
死ぬ、は言い過ぎだが、死なないまでも引退くらいは視野に入れてるのかもと私は思った。
よくよく考えてみると、ここ最近の氏の物語のたたみっぷりには考えさせられる所がある。タイタニアを皮切りに、アルスラーンときて本シリーズである。
怒涛のたたみっぷり。内容は…ともかく凄まじいたたみっぷりである。
調べてみると氏は年は今年で67歳であるらしい。
一般社会の定年の上限が延びているとはいえ、もうリタイヤしてもいい頃合ではある。
これまでの言動や素行から言ってもあながち無い話ではない。
しかし…。
「やはり死ぬんちゃうん…?」
私はまた不敬なことを思ってしまった。
小説家は別に書かなくても小説家では無いのか。
たんに肩書きだし。死ぬまでやれるけどとも私は思った。
「書かない小説家はただの豚だ」とは誰も言わないではないか。
「ならば死ぬまで働け!」
人というのは他人に対しては厳しく当れる生き物であるということを私は知っている。
勝手な話である。聞き流して欲しい。
実際のところ作品が完結するのはうれしい。中途半端は良くない。結末まで読みたい。きっちり憂いなく人気シリーズの幕を引いて悔いなく残りの作家人生をエンジョイして欲しい!と私は強く思った。
その結末が面白いか面白くないかは別にして…。
しかし、前作から時が経ち過ぎである。内容のほうは私はほとんど忘れてしまっていた。しょうがないのでリハビリがてら前の巻から私は読み直した。
竜堂兄弟のパート。敵役のパート。時事ネタ皮肉パート。
三位一体の物語であったことを私は思い出した。
「ああ。そういう話であった」
作中にスマフォが登場するなど、しれっと現代にアップデートされていたり、突っ込みどころは結構あるのだが正直私はあまり気ならなかった。
むしろ懐かしさと面白さの方が勝った。と言うか本当に懐かしい。
この作品読み始めたのは中学生だったような記憶が…。
「うっ、頭が…」
「しかしこれ本当に後一冊で終わる事が可能なのか…」
広げた風呂敷は途方もなくでかいように私は感じた。
たためるのか、否か…。もっとも悩むのは私ではなく作者のほうである。
不安と期待を持ち来年の新作を楽しみに待とうと私は思った。
しかし…「本当に出るのか?」
一抹の不安を持ちつつも私はワクワクしている。