真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

「柳生連也斎 秘伝月影抄」(1956)雷蔵VS勝新。

当然白黒の84分。

 

原作は五味康祐の小説らしいが未読。だがどうやらかなり脚色されているらしい。

 

あらすじは、尾張藩の家老から推挙され、宮本武蔵(黒川弥太郎)は藩主徳川義直(三津田健)の前でその腕前を見せつけるものの、指南役の柳生兵庫之介(佐々木孝丸)の反対で士官の機会を失ってしまう。このことに憤慨したのが近習、鈴木綱四郎(勝新太郎)。名古屋を去る宮本武蔵に思いのたけを打ち明ける。これに感じた武蔵は綱四郎に不敗の剣理「見切りの秘太刀」を伝授し名古屋を去る。この一件から綱史郎は兵庫之介とその息子兵助(市川雷蔵)に激しい敵意を抱くようになる。…みたいなお話。

 

柳生VS宮本の代理戦争的なお話で最終的に雷蔵VS勝新みたいな流れ。

本作の主人公は市川雷蔵演じるところの柳生兵介(柳生厳包。のちの連也斎)なのだが完全にライバル役の勝進が喰っちゃってる。勝新演じる鈴木綱四郎は陰のある天才剣士で闇が深い。冒頭の宮本武蔵の仕官の件に始まり、片思いの女(この女は兵介に惚れている)に袖にされ、藩の剣術師範役も贔屓で兵介に持っていかれる。たまる憎悪、堕ちるダークサイド。最終的には切った張ったの果たし状で決戦になる…。そんな勝新なのだがこの頃はまだ太ってない。スリムでスマート。どことなく花形満を彷彿させる。ダークサイドに堕ちた花形満みたいなイメージ。因みに主人公も花形満的なイメージだったりする。ただ闇はない。

 

太陽と影。この対比が最後まで続く。雷蔵は曇りのない太陽。そこに淀みはない。勝新は闇。そこには不満が渦巻く。お互いに剣の腕は1流で藩主の近習を務める家柄。お互いエリート。なのにまるで違う道を行く。そこには剣の流派であったり恋愛関係のもつれだったりするのだが、光と闇が交錯している。結末の最終決戦も太陽と影が大きくかかわってくるので意識的な演出なのかも。

 

結論的にはあまり面白くない。多分、市川雷蔵主演でなかったら見なかっただろう。まあでもスリムかつスマートな勝新は堪能できたので良しとしよう。と言うような映画でした。

 

ぎゃふん。

 

 

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 尾張柳生3代目が主人公という事も見るきっかけだったのだが。