真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

「LOOPER/ルーパー」(2012)時がたてば風貌も変わるが…。

髪の毛が亡くなっていく様を見せられるのは正直辛い。特に物語途中の落ち武者ヘアー。キツイ。時の流れって残酷ね。あ、映画の話。

 

洗髪するたびに排水溝にたまる自分の髪の量を見ていたら切なくなったので久しぶりにブルース・ウィリス師匠の出ている映画を見たくなった。ちなみにウィリス師匠の出ている作品で1番好きなのは「12モンキーズ」だったりする。と言ってもはるか昔にに見て以来見直していないので内容はほとんど覚えていない。見た当時やたらと胸に突き刺さった切ない衝撃とラストに流れるストロングのエンディング曲ぐらいしか覚えてない。その程度の不詳の弟子です。正直な話「ダイ・ハード」も2までしか見ていない不詳の弟子だったりする。なぜか2以降見る気にならんのです。すんません師匠。…抜け毛の量が多いだけでまだ全然剥げてないですけどすみません師匠。

 

で、手に取ったのが本作。ウィリス師匠とジョセフ・ゴードン=レヴィットが出演しているので見ることにした。理由は単純。ジョセフ・ゴードン=レヴィットが好きなんす。どこがって言われると困る。まあ、好きなんです。何となく頼りない柔和な顔が嫌いじゃない。それだけなんだけど、これが相当面白かった。

 

物語はタイムトラベルもの、未来の殺し屋の話。2044年、主人公ジョーは「ルーパー」と呼ばれる殺し屋を生業にしている。ルーパーとは未来から転送されてくる標的を殺す処刑人。2074年、30年後の未来では殺人が犯せないらしい。なぜかと言うと生命管理の為にナノマシンが体内に埋め込まれていて、殺人が不可能な世界になっているとのこと…。よくわからんが国民背番号制もびっくりの超管理社会で極秘裏に人を殺すことが不可能という事らしい。身元情報から色んな所に足がつくという事か。因みに2074年のアメリカには「レインメーカー」を名乗る強大な力を持った支配者が巨大な犯罪組織を仕切っているらしい。レインメーカーとか言われちゃうと、新日の金髪のプロレスラーを私は想像してしまうのだが、本作のレインメーカーなる人物は金の雨は降らせないが血の雨は降らせるらしい。おっかない。

そこで犯罪組織は開発はされたが法で使用を禁止されたタイムマシンを使って消したい標的を過去に飛ばして殺すという回りくどい方法をとる。因みにこのタイムマシンは30年後の過去にしか人を飛ばせないし片道切符の不完全な品物らしい。見た目はガンダムのボールの手や砲身がもげた姿にそっくりでウェザリング感が半端ない。うむ。嫌いじゃないレトロなデザイン。

ルーパーたちは未来の犯罪組織からの指令で、未来から飛んできた標的たちを消していく。方法は難しくない。所定の場所に赴き、所定の時間、場所に飛んでくる標的をラッパ銃と呼ばれる散弾銃で撃ち殺す。本当に飛んできた瞬間に外しようのない至近距離から撃ち殺す。殺した後は死体を焼却炉で焼却する。報酬は銀の延べ棒。これは殺人の対価で、標的の体に括り付けてある。現物支給で仕事をこなせばこなすほどもうかるシステムになっている。ガンガン殺す流れ作業。諸行無常である。

そんな未来の殺人代行業ルーパーは簡単なお仕事だが破ることのできない掟というものがある。未来から送られてきた標的は必ず殺さなければならないという事だ。例外はない。もしも破れば組織から消される。例え送られてきたのが未来の自分であったとしてもだ。

ルーパーにも引退がある。30年後から送られてくる標的をルーパーたちは殺していくのだが、送られてきた標的が30年後の自分だった場合、それが最後の仕事となる。ルーパーと言う仕事は自分で自分を殺すことによって完結する。その行為を「ルーパーを閉じる」というらしいのだが、ルーパーを閉じて引退しその後30年前の自分に殺されるまで余生を過ごすことになる。

 

この基本設定の下に物語は進行していく。主人公ジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が、30年後の自分(ウィリス師匠)を仕損じて逃してしまいそれぞれの思惑を胸に追跡劇が幕を上げる…と言ったお話。

 

いや良い。まず世界観や小道具の数々が良い。輪っかの付いた車とついてないバイクがある世界観。鳥山明大友克洋の描く未来の世界の小道具感が満載で見ていて楽しい。未来っぽくないのに現実離れしているその感じが素敵。ちょうどいい感じ。やり過ぎてない感じがホントに良い。小ネタも良い。この世界の時間軸はドラゴンボール的な並行世界では無くて直列世界で考えられている。過去の行いが未来に直結する。そのネタが満載で作中でも最初から最後まで緊張感を煽っている。あとTKと呼ばれる能力が鍵となっている。TK…小室哲哉の事ではない。この世界では念動力(超能力)の事をそう呼ぶらしい。突然変異で人口の約10%の人間が持っている能力との事。…突然変異って便利な言葉だな、という率直な突っ込みは置いといて、このTKの視覚的表現が物語終盤に炸裂する場面があるのだが、まんま童夢AKIRAだったりして見た目に楽しい。みんな大友克洋好きだな。まあわかるけども。

 

生きるためルーパーになり、食うため銃をとり人を殺す。欲するものは愛だが手に入れられず、虚無で刹那的な人生を歩むジョー。ルーパーが閉じてからの30年でついに手に入れ、失った愛を守るため、命と未来をかけて、30年後の過去に戻りまた人を殺すオールドジョー。それを阻止し自らの命の為、未来の為に、オールド・ジョーを殺そうとして、30年の工程をすっ飛ばして、愛するもの、守りたいものを見つけてしまったヤングジョー。結局の所、愛の為に自らの全てを賭けるヤング・オールド両ジョー。何とも皮肉で切ない話である。大体がルーパーと言う仕事に就くという事は、限定された生を得る代わりに必ず来る破滅、カウントダウンされる死を受け入れるという事。死んだように生きていたヤング・ジョーにとって、オールド・ジョーを追っかけ初めてから最後の瞬間までの刹那は、間違いなく自分の選択で、意志で生きるという事を実感できたのではなかろうか?と思うと少しは報われたのではとも思うが切ない。

 

しかしジョセフ・ゴードン=レヴィットから老化してのブルース・ウィリス師匠はない。客観的に見てない。一応特殊メイクと化してジョセフ・ゴードン=レヴィットが所作とか口調とかをウィリス師匠に寄せているらしいのだが、それでもないだろという思いが序盤は凄く強かった。けど終盤はその違和感が払しょくされ、レヴィット→ウィリス師匠が普通に見えたので、ますます私の中のジョセフ・ゴードン=レヴィット株が上がった。

 

見終わってから思い出したのだが「12モンキーズ」でもウィリス師匠は未来から過去に飛んだ男を演じていたことを思い出した。過去に2回跳んだ男ブルース・ウィリス。なんかカッコいい。しかし本作は本当に面白かった。感心するところも突っ込み所も満載で満足した。うーむ。ブルース・ウィリス師匠の他の映画も見てみるかなと…。

 

ぎゃふん。

 

 

 どんだけ辛く苦労した30年だったか考えさせらる老け方だ…。