真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

ろくでなし達のもがき「ラッキーブレイク」(2001)

ピーター・カッタネオ監督作品。

 

同監督の撮った「フル・モンティ」が好きだ。男性のストリップショーという奇抜なアイディアもさることながら、何ともうらぶれた、うだつの上がらぬ冴えないおっさん達が、そこに至る工程を、シニカルかつ愛情をもって描いていた。その丹念な作りが私の心の琴線に触れ非常に印象に残っている。故に 同監督の次回作も非常に期待していた。で、本作なのだが…15年前の作品である。という事は必然的に「フル・モンティ」は20年も前の作品になるのか…。いやはや、光陰矢の如しとはよく言ったものだ。先人たちは流石に偉大だね。よく世の理を分かっていらっしゃる。って、そんなことはどうでも良くて、本作の話である。好きだと書いておきながら何で15年たってから見てんだよっ!という突っ込みが聞こえてきそうであるが、実はこの作品、発売直後購入している。多分13,14年ぐらい前の話。それからずっと熟成してしまったのだ。何というか、買って満足してしまったのだ。見ればいいのに見ないんだなこれが。自分のことながら困ったものである 。

 

前置きが長くなってしまったが本題に入ろう。本作の内容は監獄が舞台の脱獄物である。主人公であるジミー・ハンズは相棒であるルディと銀行強盗を試みるも無残に失敗。囚われの人となり監獄へと収監される。そこでミュージカル好きな所長を利用する脱走計画を思いつき実行に移そうとするのだがそこで色々と物語が…というようなお話。監獄×ミュージカル×脱獄×コメディというような感じ。

 

監獄物で英国物と言うと真っ先に思いついたのは「ミーン・マシーン」だったりする。あれは監獄×サッカー×コメディだったが、やはり単純な監獄物では何かが足りないという事なのだろうか?まあ、確かにこの手のシチュエーション物は最初にやったもん勝ちみたいなところはある。やり尽くしちゃうから後続に続くものは×何かが重要になってくるかもしれない。「アイディアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何物でもない」という言葉がしっくりくる。正しくそんな感じだ。ただ、何でもかけ合わせればいいというもんでもない。が、この監督はそこら辺のバランス感覚が優れているんだろうね。無理のある話をけれんみたっぷりに味付けしてるんだけど非常に面白かったですよ。

 

キャラクターもわかりやすく屑しか出てこない。ほぼ屑。まあ監獄物の前科者ばかりの話なので当たり前なのだがね。銀行強盗を働くほどの屑ながら、どうにも悪に染まり切れないヘタレな主人公。それに準じる相棒。物腰柔らかな詐欺師の屑。放火魔の屑。トマトの栽培に全ての愛を注ぐサイコな屑。囚人の登場人物に関して言えば、屑、屑、屑の群れ。唯一の例外は主人公と同室のクリフのみ。彼は善良かつまともな人間なのだが何とも間が悪い人間なのだ。色々な意味で…。囚人以外でもミュージカル好きな監獄所長。意地悪な刑務官。刑務所の女カウンセラーなどいろいろ出てくるが、皆なんかいろいろなタイプのダメな人間でキャラが濃い。

 

まあ最終的にはそれぞれの大円団を迎えることになる。一人を除いて…。正確には2人か?。まあよくまとまった良い映画だと思う。あとラストのエンドロールで流れる「サミー」が良い!死ぬほどいい。単純に私がこの曲が死ぬほど好きなだけなのだが。クリフがピアノで弾き語る「サミー」は凄まじく良い!元曲はバリバリのディスコミュージックなんだけど、カバーするのは皆こうゆう弾き語り風になるのは何なんでしょうか?まあ歌詞とかは弾き語りに相応しいような歌詞だからかな?よくわからんが個人的には奥田民生バージョンが好き。全く関係ない話ですが。

 

結局の所、人を変えるのは人ですよ、っていうような映画でした。あと、主人公の相棒ルディが嫌々始めたミュージカルにだんだん嵌っていく様が、個人的にツボでした。

 

なんつって。ぎゃふん

 

 

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 主人公のジミーの風貌は、ダークサイドの落ちたマッカトニー、もしくはチンピラ臭を薄めたギャラガー兄弟みたいで、犯罪者面が様になっていて個人的には凄い納得しました。ダメかな?ぎゃふん。