真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

「チャッピー」(2015)スタイリッシュなロボコップ。

チャッピーと聞いて真っ先に思い浮かんだのが、ながいけんの「チャッピーとゆかいな下僕ども」とか言う漫画だったりする。私はそんな人間だ。

 

ニール・ベルカンプ監督作品「チャッピー」。この監督の作品は好きで過去2作も見ている。本作も楽しみにしていたのだがタイミングや時期を逸してこれまでスルーしてきたが、今更ながらやっと見た。第1作目の時にも感じたのだがこの監督の作品からは私が愛してやまない「ロボコップ」の影響を強く感じる。本作はモロにニール・ベルカンプ風の「ロボコップ」だった。

 

物語の舞台は2016年の南アフリカヨハネスブルグ。街は重犯罪が多発する修羅の街。治安悪化の抑制を図るために当局はロボット警官「ドロイド」を配備し、治安維持を図っていた。物語はそのロボット警官の一体であるNO.22がAIを得て自我を持ち、「チャッピー」と名付けられその後に至るまでの顛末の120分のお話。

 

チャッピーは見た目が相当男前。「アップルシード」のブリアレオスと「パトレイバー」のイングラムを足して2で割ったような感じ。完全に影響下でしょう。瞳はドットの四角で、それもなんだか間が抜けた感じで可愛い。このチャッピーが自我を得て成長する過程を主軸として、貧富の格差のが激しいヨハネスブルグのヒャッハー達のしのぎとロボット開発者達感情の軋轢が交差する内容になっている。役者も豪華でヒュー・ジャックマンとかシガニー・ウィーヴァーとかが出てる。特にヒュー・ジャックマンが演じる軍人上がりのロボットエンジニアは良かった。人間クズを好演している。うん、ナイスなまでのクズ。

 

私見ですがニール・ベルカンプポール・バーホーベンの完全後継者と認識している。バーホーベンがエロ・グロ・バイオレンスとするならば、ベルカンプはエロではなくバカが入る様に思う。バカ・グロ・バイオレンスが基本路線であり本作もそんな感じ。狙ってバカなのか真面目にやってバカなのかは謎だが、それが最大の魅力だったりする。

 

本作も特に物語の中盤から後半は?????????となるほどバカみたいな設定だったり突っ込み所満載の内容だったりする。正直、いろいろ破綻してるし粗が目立つ。ここら辺の所を看過できるかどうかで本作の評価が決まるような気がするが、個人的にその馬鹿さは嫌いになれない。ただ第1作目の「第9地区」と比べると作を重ねる事に話の筋が劣化しているような気がする。うーん。困ったもんである。そこらへんの所は次回作に改善を期待したい。

 

とは言うものの、個人的には十分に楽しめた。特に中盤から後半。突っ込み所満載ながら考えさせられるところ多かった。

魂とか心とか人格とか。

視聴者は純粋無垢でタブーの無いチャッピーを通してヨハネスブルグの様々な人間を見ることとなる。その人間達は大抵醜い。ただひたすらに悪事を働く輩。欲求の為に暴走するエンジニア。出世欲に駆られ妬みで事を起こす野蛮人等々…。

デフォルメされ突き抜けた登場人物たちは血の通った命を持った人間であるが、皆、欲が深く邪悪だ。肉体を持たぬロボットであるチャッピーのみが純粋無垢な心を持っていると言う皮肉。チャッピーとの関係性で母性だったり父性だったり自己犠牲を覚えるヒャッハー達の件とかも人に救いを感じさせる話の反面、そういった環境を作れない社会に対する痛烈な皮肉も感じる。

 

某映画では「マナーが人を作る」と問うていたが、ニール・ベルカンプは第一作目の「第九地区」から一貫して「環境が人を作る」と手垢がついたお題目を命題にしている節がある。本作はロボットを通じて真正面からそれを描き切った作品ではないだろうか。

 

 

しかしオチの件の人格転移&人格複製の件は看過できないし色んな意味で納得もできませんが…。ぎゃふん。