真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

バーホーベンの巨大昆虫大戦争「スターシップ・トゥルーパーズ」

 

1997年の映画。原作は遠い昔に読んだはずだが、もはや内容は覚えてはいない。俺は公開時も今も良い映画だと思うんだけど…興行的には失敗だったらしい。

 

一応ハイラインの「宇宙の戦士」の映画化ということで、登場人物とか大まかな概要はほぼ一緒なのだがバーホーベン風に換骨奪胎されている。

原作における目玉、肝心のパワードスーツが出てこなかったりするのは、バーホーベンがやりたかったこと、2次大戦のノルマンディ作戦みたく、巨大昆虫の大群と人類が戦って惨たらしくゴミのように死ぬ人間の姿だったのだろう。兵士の四肢が飛散する容赦ないゴア表現には確かにパワードスーツは邪魔だわな。

諸行無常感、人間の厭らしさや汚さを取り繕わない、禍々しいまでのバーホーベン的死生観が全編に炸裂している。

大体が最終的には人間も虫と同じで相手を殲滅するまで戦い続ける救いのないエンドレス戦争エンド。そんなラストで上がってしまうような視聴者に対して軍国風プロパガンダCMを差し込み「こんなんで気分が高揚するような奴は虫と一緒や!」とばかりに視聴者に冷や水をぶっかけ嘲笑うかのような徹底的にニヒルな姿勢。

バーホーベン的な風刺なんだろうけど…観る人を選ぶ作風よな。

今見ても色あせないフィル・ティペットVFXと管理統制された情報に対する皮肉がバーホーベン節と嚙み合って一大SF巨大昆虫地獄絵巻となる様は今見ても圧巻。

元ネタを同じくするガンダムと全く異なる作風ながら通底するものを感じるのは偶然ではないように思う。監督同士の年齢も似通っているし。ポール・バーホーベン84歳。富野由悠季81歳。戦争にギリ間に合わなかった世代。原作の根底にある全体主義ナショナリズムに対する皮肉。公権力に対する疑心というのを肌身をもって知る世代で共鳴するんだろうか。とか思った。

四の五の書いたが、細かいことは気にせずバーホーベン風味の地獄を楽しむ映画であるのは間違いない、と思う。

 

鑑賞時間129分。