2022年の映画。アメコミ未読勢の映画の感想。
正直MCU作品はエンドゲーム以降食傷気味だったりする。なんか終わりなき戦いの体になってきており、誰得の展開なのかといえばディズニーだけが得をする展開で正直追っかける気にならない。そもそも配信ドラマ、新作映画と正気ですかと言いたくなる数で、もはや、さようなら状態だったりする。とはいうものの、エンドゲーム以前から続いている未完結の一部のシリーズぐらいは追っかけようと思っていた所での本作である。しかもサム・ライミが約十年ぶりの監督復帰作ということで気にはなっていた。しかし冒頭に書いたとおりの状態ですかっり腰が重くなっていてたのだが重い腰を上げてやっと視聴した次第である。結論としては面白かったが、諸手を挙げて称賛したいわけでもなく少々モヤつく感じ。なんか考えがまとまらないので箇条書きで思ったことを記しておく。
クリチャーの造形やら表現は良い。特に冒頭のビボルダーとタコを合体させたようなクリーチャーがかわいかった。眼だけでちゃんと感情表現する(主に怒と驚)ところが特にいい。やられる時もちゃんとちゃんと擬音でキュポンと画面に擬音が書いてありそうな効果音が聞こえる所も好感度高し。あとストレンジとアメリカが多次元を行き来する描写も非常にいい。まるで万華鏡のようにぐるぐる回るような映像で次元を行き来する表現はテンション上がった。やっぱ金のあるサム・ライミの画作りは良い。
主人公のストレンジは相変わらず強いんだか弱いんだか分からない感じ。しかもこいつはいつも悩んでいる。本作も冒頭から元カノの結婚で凹んでいるし、なんだかなという感じでグジグジしている。おっさんだって悩むが、だからといって悩んでいても残念ながらかわいくはないのだ。
ネクロマンサー化してからのゾンビストレンジを使役するところは最高だった。本作のハイライトかもしれない。ビジュアル的に闇の千手観音の体を成しており、ミイラ化し崩れ落ちた頬から除く歯、哄笑しながら飛翔する様は正に悪鬼羅刹。控えめに言っても正義のヒーローにはまるで見えず、かなりカッコいい。最終的に禁断の書を経て開眼し三つ目がとおる化する所もいい。
それにしてもストレンジのトラブルメーカーぶりは本作でも半端なく、常に最悪の展開に舵を切っていく。遅かれ早かれ突っ込むものの、天然で虎穴に足を突っ込んで、ことごとく周りを巻き込むのは流石。ある意味主人公の鏡ではある。
闇落ちしたワンダがスカレーット・ウィッチとして登場するのだが、正直ラスボスとしての印象が非常に弱かった。少なくとも私は弱く感じた。そもそも味方の時にもさほど強さや魅力を個人的には感じなかったキャラなので闇落ちしたとて感があり、実際は強大な力の持ち主なのだがビジュアル的にも性格的にもピンとこなかった。とにかくリユース感があり新鮮さを感じなかった。子供の件も超能力を持ったヒーローも所詮は一人の人間に過ぎず弱いということが言いたいのはわかるのだがそれはストレンジでも十分表現しているのでダブっているのでクドく感じてしまった。
途中出てきたイルミナティの面々を惨殺したあたりは相当気持ちよかった。
あとプロフェッサーXがジェームズ・スチュワートで良かった。瞬殺されてさらに良かった。
アメリカ・チャベス。凄い名前だ。本作の真の主役。次元跳躍者だし。彼女のメンターとしてストレンジの威厳がなんとか保たれていた気がする。
全体的にサム・ライミらしい作品に仕上がっている印象。ブルース・キャンベルとかちょい役で出てくるし。寒いギャグもあるし。テンポよく畳みかけるお得意のお話の構成とか容赦なくどうでもいいネームドキャラを瞬殺していくのも相変わらず面白かったのだが、正直足枷感を感じたのもまた事実。なんか設定された枠の中で、お約束とか指令をこなしてる感が節々にある。イルミナティの件とかプロフェッサーXの件とか。無論オーダーをこなしながらまとめる手腕は流石サム・ライミなのだが、なんか酔狂な金持ちがもっといい脚本を優先的に与えて、思うがままに好き勝手にサム・ライミに映画を撮らせてやって欲しいとか他力本願的なことを思ってしまうことも否めない作品だった。いや、十分面白かったけども。
鑑賞時間126分。