真空断無弾

日々の色々な事柄の忘備録的感想。戯言。

ラッセラ、ラッセラのメロディーが耳にこびりつく。「AKIRA」

 

1988年の映画。あのねぶたの掛け声、やたらとこびりつきますよね。以上…。というのでは話にならないのでとりとめのない感想を書いときます。

ジャパニメーションの先駆けと言われる本作ですが、私はアニメの方は思いっきり世代のはずなのですが、これまで機会がなく一度も通して観たことがありませんでした。無論、全編観たことが無いとはいえ、部分部分は少しは観たことがあるくらいの状態でして…。最よく見たことがあるのはラストのイデっぽい所だったりします。かの有名な「健康優良不良少年」とか「さんをつけろよでこ助野郎」とかは映像としてこれまで観たことがありませんでしたので今回堪能しました。

原作の方はちょっと世代から外れていて後追いだったりします。一応、読んだはずなのですが正直内容を全く覚えていないません。講談社から出てる、あの原色で恐ろしくカラフルな大判のコミックスを持っていたはずだし、読んだはずなのですが、恐ろしいことに全く内容を憶えていないという体たらく。。老いって、怖い…しかし、裏返すと記憶の片隅にすら残らないほど心の琴線に触れなかった作品であるともいえるのです。現実的に機会を作れば通して観れたはずの本作を頑なに観なかったのは何が原因なのかちょっと考えたのですが…、あえて言うならば

タイトルが「AKIRA」なのに主人公が金田だったから…。

あ、主人公は鉄雄もか…?とか埒のない事を考えつつ初めて完走したのですが、今更ながら、

すげえ面白かったです。

もう一回も原作読もうとか思いました。

でもタイトルが「KANEDA」でも見なかっただろうな…。

 

鑑賞時間124分。

荒野に鳴り響くジョン・ジョヴィの歌声。「ヤングガン2」

 

1990年の映画。久しぶりに観返した話。

無名のアウトローたちが名声を得るまでの前作に対し、本作は名声を得たアウトローたちが転がるように破滅に爆走していきます。滅びの美学とか判官びいきとかもう癖の極致のような作品です。機転が効こうが、才覚があろうが、腕が立とうが関係なく、真綿で首を絞められるようにどんどんドツボにはまっていきます。追い詰められていくエミリオ・エステベス扮するところのビリー・ザ・キッドの糞餓鬼ぶりがもう最高で、状況は悲惨極まりないのに生き生きしているビリーとその仲間の矜持が最大の見どころですね。物語のラストと同時に流れるジョン・ボン・ジョヴィの「デイズオブグローリー」も無駄に熱くて非常にいいです。西部開拓時代から近代に移り変わる時の流れに消えてゆく西部のガンマンたちの哀愁はベタながら最高でした。

鑑賞時間106分。

今度はちゃんとやり返していた。「スカイラインー奪還ー」

 

2010年の映画。正直前作の救いがなさすぎる胸糞過ぎる終わり方で見るのをためらっていた作品なのだが意を決して観てみたら今度はちゃんとやり返していた話の感想です。

前作が「宇宙戦争meetハンター×ハンター キメラアント編」みたいな絶望しかない話だったので正直、手をだすのを凄いためらっていた。そうこうしているうちに第3作目の完結編まで公開されてしまってずいぶん経つ。もう3年前の話ですよ。で完全に風化する前に観ておこうと思ったわけなのですが、率直かつ正直な感想は、

良かった。今度はちゃんと反撃してる。

でした。

前回もつまらなくはないけど辛すぎるんですよ。本当に一方的な虐殺でね、ハンター×ハンターにおけるキメラアント編の中盤から後半の絶望感しかない感じが延々と続く感じがね。もう本当に地獄。ビジュアル的にもエイリアン夏の大量アブダクション祭りから脳みそパッカンパッカンライン仕事まで、本当にこれ以上ない地獄旅行で辛かった。

じゃあ今回はどうなのかといえば、

正直あまり変わりはありません

でも、皆まで言うな。今度はちゃんと反撃してるぞ!もうそれだけで十分です。大量アブダクションも脳みそパッカンパッカン、ライン仕事も全部許せる。ちゃんと因果を応報しているではないですか。なんと素晴らしいカタルシス…と言いつつも心の片隅でもっと絶望的な話でも良かったかもとか思っている我儘な俺もいたりする。

鑑賞時間105分。

顔見世興行のような作品だったが…。「ニンジャバットマン」

 

2018年の映画。

顔見世興行のような話だが後に続くわけでもなさそうだし…とか思っていたら実写の新しいバットマンが公開されちゃったのでいい加減観ておこうかと思った次第です。ちなみにマット・リーヴス版のバットマンはまだ観れていない…。

ドラえもんとかクレしんのノリで戦国時代にバットマンがタイムスリップしたら的な話、もとい東映特撮祭り的な話で色んなヴィランバットマン一党が出てきてワキャワキャするオールスタームービーだった。正直これが通常運転かどうかは普段これ系のアメコミアニメを見ていないので分からないがお祭り感の強い作品なのは間違いない。

個人的には最新ギアに頼り切ってるバットマンがそれらを失って狼狽える様がのび太とオーバーラップしてちょっと面白かった。バットマンのび太だとするとジョーカーは何なのかと考えていたらまるっきりバイキンマンだった。ハーレイ・クインがドギンちゃん。と、するとバットマンのび太アンパンマンで個人的には非常にしっくりきた。アメリカ原作の作品を日本的解釈で再構築したら…さもありなん。というかアンパンマンのフォーマット何気に有能だな。とか思った。

鑑賞時間85分。

明るさはあるが狂気が足りない気がする。「ハーレー・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」

 

2020年の映画。マット・リーヴス版のバットマンを見るに当たって、その前の関連作品を観とこうと思て観始めたのだがマーゴット・ロビーがこの役を演じたのはデヴィット・エアーのスースクからだっけ?最早、記憶が非常に曖昧。そんな状態で視聴。

本作のあらすじはざっくり言って、ジョーカーに振られたハーレイ・クインが独り立ちする話。ジョーカーという暗黒世界のプリンス、彼氏にして生みの親の後ろ盾を失ったハーレイ・クインが悪党に追われる話がメインになる。ハーレイ・クイン自体が性格破綻者なので恨み辛み嫉みでわんさか追いかけられる羽目になるのだが中でもユアン・マクレガー演じる所のブラックマスクが最大の敵としてひつこく追いすがってくることとなる。

正直な所、内容については可もなく不可もなくといった感想。基本的には楽しく観れたのだけど正直期待したほどの物でもないのも事実。何かがっかりしたのだが、なんにがっかりしたのかちょっとだけ考えてみた。

まず第一にマーゴット・ロビーユアン・マクレガーは良かったのだけどその他の配役がちょっと物足りなさすぎるような気がする。特に女性だけでチームを結成するのはいいが、正直スター力が足りなすぎるような気がした。手癖の悪い東洋系の小娘と要領の悪い女刑事はまあいいとして、残りの二人がちょっとキャラクターの存在感に対して俳優としてのスター力が足りない気がする。特に終盤のラストバトルでは埋没気味で、正直、段取り感満載でお遊戯にしか見えなかったアクションと共に残念に感じた。

第二に微妙だったのはハーレイ・クインのキャラクター。多少性格に難があるものの普通のいかれた人でいいのかという問題。想像する範疇のいかれた人間からはみ出していないキャラクター造形。それってどうなのか。私の知る限りではハーレイ・クインはジョーカーとの恋愛と犯罪行為に刺激を感じる元精神科医で、廃液タンクに放り込まれてリザレクションした正気を失った女ヴィランという認識だったのだが、本作では暴力的に過激ではあるが正気の人ではないか。少なくとも本作のハーレー・クインは正気を失ってはいないと私はそう感じた。実際、これでいいのかどうなのか、正直、原作未読なのでよく分からない。でもこのキャラクターからは明るさは感じたが狂気や危うさは感じなかった。

ラストの件からするとジョーカーと縁が切れて社会復帰(小悪党として)できるくらいは更生して独り立ちしたという事なのだろうけどヴィランのスピンオフとしてそのラストはどうなのか、あまりにも予定調和で正直なんか物足りなさが拭えなかった。

鑑賞時間109分。

 

モトローダー味を感じた。「REDLINE」

 

2010年の映画。レッドラインと呼ばれる銀河最速を決めるカーレースを巡るアニメ。

なんかモトローダー2味があったり、アメコミ味があったり、永井豪味があったり、ちばてつや味があったり、ナイトライダー味があったりのあくの強い作風。基本JP(ジョシュア・パンクヘッド)の物語であり、何も持っていない人間が全てを望み手に入れるというおとぎ話であった。JPにまつわるエピソードのちばてつや味。その他の脇役から漂う永井豪味。そしてJPの愛機(トランザム!)から漂うナイトライダー味に、熱い70,80年代テイストを感じた。主演がキムタクだったり他の脇役も有名俳優を声優として配しているなどノイジーな要素も多いのだがそれが気にならないくらい熱い話だった。ルックの割に非常に古風で王道なストーリーで中盤以降の熱い展開で非常に盛り上がったところでのラストは投げっぱなし感は正直半端ない。個人的にはなんだかなという感じで納得できなかったがそれまでにぶち上げたものが全ての作品なのかもしれない。

鑑賞時間102分。

 

 

気がついたら公開してもう一年も経っていた。「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」

 

2022年の映画。アメコミ未読勢の映画の感想。

正直MCU作品はエンドゲーム以降食傷気味だったりする。なんか終わりなき戦いの体になってきており、誰得の展開なのかといえばディズニーだけが得をする展開で正直追っかける気にならない。そもそも配信ドラマ、新作映画と正気ですかと言いたくなる数で、もはや、さようなら状態だったりする。とはいうものの、エンドゲーム以前から続いている未完結の一部のシリーズぐらいは追っかけようと思っていた所での本作である。しかもサム・ライミが約十年ぶりの監督復帰作ということで気にはなっていた。しかし冒頭に書いたとおりの状態ですかっり腰が重くなっていてたのだが重い腰を上げてやっと視聴した次第である。結論としては面白かったが、諸手を挙げて称賛したいわけでもなく少々モヤつく感じ。なんか考えがまとまらないので箇条書きで思ったことを記しておく。

クリチャーの造形やら表現は良い。特に冒頭のビボルダーとタコを合体させたようなクリーチャーがかわいかった。眼だけでちゃんと感情表現する(主に怒と驚)ところが特にいい。やられる時もちゃんとちゃんと擬音でキュポンと画面に擬音が書いてありそうな効果音が聞こえる所も好感度高し。あとストレンジとアメリカが多次元を行き来する描写も非常にいい。まるで万華鏡のようにぐるぐる回るような映像で次元を行き来する表現はテンション上がった。やっぱ金のあるサム・ライミの画作りは良い。

  • 迷える主人公

主人公のストレンジは相変わらず強いんだか弱いんだか分からない感じ。しかもこいつはいつも悩んでいる。本作も冒頭から元カノの結婚で凹んでいるし、なんだかなという感じでグジグジしている。おっさんだって悩むが、だからといって悩んでいても残念ながらかわいくはないのだ。

ネクロマンサー化してからのゾンビストレンジを使役するところは最高だった。本作のハイライトかもしれない。ビジュアル的に闇の千手観音の体を成しており、ミイラ化し崩れ落ちた頬から除く歯、哄笑しながら飛翔する様は正に悪鬼羅刹。控えめに言っても正義のヒーローにはまるで見えず、かなりカッコいい。最終的に禁断の書を経て開眼し三つ目がとおる化する所もいい。

それにしてもストレンジのトラブルメーカーぶりは本作でも半端なく、常に最悪の展開に舵を切っていく。遅かれ早かれ突っ込むものの、天然で虎穴に足を突っ込んで、ことごとく周りを巻き込むのは流石。ある意味主人公の鏡ではある。

闇落ちしたワンダがスカレーット・ウィッチとして登場するのだが、正直ラスボスとしての印象が非常に弱かった。少なくとも私は弱く感じた。そもそも味方の時にもさほど強さや魅力を個人的には感じなかったキャラなので闇落ちしたとて感があり、実際は強大な力の持ち主なのだがビジュアル的にも性格的にもピンとこなかった。とにかくリユース感があり新鮮さを感じなかった。子供の件も超能力を持ったヒーローも所詮は一人の人間に過ぎず弱いということが言いたいのはわかるのだがそれはストレンジでも十分表現しているのでダブっているのでクドく感じてしまった。

途中出てきたイルミナティの面々を惨殺したあたりは相当気持ちよかった。

あとプロフェッサーXがジェームズ・スチュワートで良かった。瞬殺されてさらに良かった。

  • 本作の真の主役。

アメリカ・チャベス。凄い名前だ。本作の真の主役。次元跳躍者だし。彼女のメンターとしてストレンジの威厳がなんとか保たれていた気がする。

  • 最後にまとまらない総評を

全体的にサム・ライミらしい作品に仕上がっている印象。ブルース・キャンベルとかちょい役で出てくるし。寒いギャグもあるし。テンポよく畳みかけるお得意のお話の構成とか容赦なくどうでもいいネームドキャラを瞬殺していくのも相変わらず面白かったのだが、正直足枷感を感じたのもまた事実。なんか設定された枠の中で、お約束とか指令をこなしてる感が節々にある。イルミナティの件とかプロフェッサーXの件とか。無論オーダーをこなしながらまとめる手腕は流石サム・ライミなのだが、なんか酔狂な金持ちがもっといい脚本を優先的に与えて、思うがままに好き勝手にサム・ライミに映画を撮らせてやって欲しいとか他力本願的なことを思ってしまうことも否めない作品だった。いや、十分面白かったけども。

鑑賞時間126分。

誰がために鐘は鳴ったのか。「コードギアス 復活のルルーシュ」

 

2019年の映画。何のために復活したのか。それが問題な話。

単刀直入にファンムービー的な作品。それ以上でも以下でもない。一度、美しく完璧に終わった話を再び語る必要が果たして本当にあったのか疑問ではあるが、それとは別に何だかんだ言いつつも単純に復活を楽しんでいる自分もいるわけで、結果オーライな感じはする。救いの少ない話であった本編の視聴者に救いを与えるファンムービーであることは間違いない。ただ、これが本当に必要な話かと考えると、やはり蛇足感は否めないのではないか。こういうのがドル箱コンテンツの宿命なのだろうがなんかモヤモヤする。とは言うものの、基本好きな作品の新作を鑑賞できるという喜びがあるのは間違いないし、間違ってない。面白いかどうかはまた別の話。最もそれを追っかける方は辛い。

鑑賞時間113分。

80年代ロス近郊の若者の閉塞感。「レポマン」

 

1987年の映画。アメリカ公開は1984年。若いエミリオ・エステベスが良い感じにチンピだった話。

正直、エミリオ・エステべスが出てなければ見なかったかもしれない映画。普通にろくでなしと愚か者しか出てこず、真っ当でない仕事も、真っ当な人間がしなければならない時代で、半端ない終末感と閉塞感が漂う。主人公のオットー(エミリオ・エステベス)が物語冒頭、ホームセンターでの仕事に嫌気さし、ブチ切れるシーンが印象的。若者特有な稚拙な危うさ、まともに生きても望むほど報われない人生に対する怒りと焦燥感が、画面に越しに伝わってきた。エステべス、いい仕事してる。糞のような社会で、権力や金に人生を踊らされ、そして誰もかれも、死ぬ。そんな感じの話を次から次へとたたきつけてくる、正にパンクでアナーキーでノーフューチャーな感じ。結局オットーも自動車差し押さえを生業とするレポマンになり、ろくでもない方に人生が転がっていく。最終的に宇宙人をトランクに積んだ車をめぐってすったもんだするのだが、この年代のアメリカの若者が真に自由になるには、トランクに宇宙人を積載した車で宇宙にでも飛んでかないと自由になる方法がないと示しているようで、閉塞感と絶望感が半端なかった。

どんなディストピアだとか思ったが、昨今の日本の現状を考え見るにこれが意外と普遍的な問題であり、未来永劫に続く問題なのだとか思ったりしてゲンナリした。面白いか面白くないかはさておき異様にパンクな映画っだった。

 

鑑賞時間92分。

俺があいつであいつが俺で。「ザ・スイッチ」

 

2021年の映画。冴えない女子高生と都市伝説級のシリアルキラーの中年の入れ替わりホラーコメディ。詰まるところ入れ替わってからのヴィンス・ヴォーンが最高だった話。

とにかくヴィンス・ヴォーンが最高で、人格が入れ替る前も後も最高だった。入れ替わり前はブギーマンとして殺戮の限りをつくし、入れ替わってからは女子高生を憑依させたヴィンス・ヴォーンのコメデイアンヌぶりが凄まじかった。思いを寄せるイケメン同級生にヴィンス・ヴォーンの風体でいちゃつくシーンなどはベタではあるが滑稽で、思わず笑ってしまった。

特に良いなと思ったのは、冒頭の入れ替わりの原因になった所。呪いの短剣の件なんかは、ジョジョの第一部を愛してやまない自分としてはご機嫌な感じで最高だった。

全体的に大した捻りはないものの、アイディア一つとヴィンス・ヴォーンの俳優力で一点突破した潔い良いポップコーンムービーなのではないでしょうか。

 

鑑賞時間101分。

「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」とはフィリップ・マーロウの有名な台詞だが、そもそもその覚悟をしなければ良かっただけの話ではないのか?「コードギアス 反逆のルルーシュⅠ與道」「コードギアス 反逆のルルーシュⅡ叛道」「コードギアス 反逆のルルーシュⅢ皇道」

 

 

 

2017年から2018年の映画。バンダイさん得意の総集編映画を見た話。

そんなにコアなファンではないがコードギアスは結構好きな作品で、TV版は1期、2期ともほぼリアタイ視聴した。その後のOVAまで見るぐらいには好きな作品である。新作劇場版公開の情報を聞いた際、何となく観たいと思ったのだが、TV版の続きではなく、その前に公開される総集編劇場3部作の続きとの情報を小耳の挟んでいたので正直どうしたもんかと迷っていた。如何に追加の新規カットや内容の変更点があろうと、正直もう一回、見返すのは億劫だったのだ。で、長い間、熟成させてしまったのだが全ては杞憂だった。恐ろしいことに、話しの筋をほとんど見事に忘れてしまっていたのだ。老いって怖い。故に真っ新な気持ちで視聴できてしまった。素晴らしい。ただ、何が新規カットで何が変更されたのかサッパリ分からず、唯一分かったのはシャーリーの顛末の件だけという始末。いや、面白かったからいいんだけども…。

見返して凄く思ったのは作品の事ではなく自身の記憶力の事であり、つまりは老いって怖いってことだった…。全く困ったもんである。

しかし、この話よくよく考えると、主人公が母親の死の復讐という暗い野望さえ諦めて、その与えられた能力を妹との隠遁生活に全振りすれば、最大の目標である「妹の安全と幸せ」は容易に達成できた話ではないのか。行動を起こしてしまったばかりに不幸を雪だるま式に倍増させ、しなくてもいい紆余曲折をしてしまったのではないかとふと思ってしまった。

…まあ、それではお話にならんのでしゃーないのだけど。

 

鑑賞時間135分(第1作)133分(第2作)140分(第3作)。

エドワード・ノートンが途中からビート・たけしのように見えてきて面白かった。「マザーレス・ブルックリン」

 

2020年の映画。エドワード・ノートン最高映画の話。原作は未読なので映画の感想を。

1957年のニューヨークを舞台に障害持ちの私立探偵ライオネル(エドワード・ノートン)が師であり友であり、命の恩人であるフランク(ブルース・ウィリス)の死の真相を追うハードボイルド映画。

エドワード・ノートンがトゥレット障害持ちの私立探偵役を演じている。落ち着きなく頻繁に自身の意思に関係なく、思いついた悪態やら意味のないことを口走らなくてはいられない難役を演じているのだが、序盤は観ているこっちのほうが慣れず、それを非常にノイジーに感じてしまい雑味にしか感じなかった。思ったことを躊躇なく叫び、首をカクカクするムーヴを繰り返すのだが、まるでビート・たけしの形態模写のよう。正直、「何やってんだよノートン」って感じだったのだが、中盤あたりで慣れてくると、エドワード«ビート»ノートンみたいな感じに見えてきて「あれ、これ、ひょっとして良くない?」とか思い出し気にならなくなってきた。最終的には「なんだよ、ノートンもっとやってくれよ」とか思い出し、もはやエドワード«ビート・たけし»ノートンにしか見えなくなった。

ブルース・ウィリスとかアレック・ボールドウィンとかウィリム・デフォーとか結構脇も豪華俳優陣なんだけどエドワード«ビート・たけし»ノートンが一人居ればそれで良い。そんなエドワード«ビート・たけし»ノートンエドワード«ビート・たけし»ノートンによるエドワード«ビート・たけし»ノートンのための映画だった。

ちょっと長いがな。

 

鑑賞時間144分。

売るだけ儲けるだけが全てではないちょっと良い話。「ペンタゴン・ペーパーズ最高機密文書」

 

2018年の映画。緊張感ある働くお仕事映画。

ワシントン・ポストの社史みたいな話。勝ち目のなし、終わりなしのベトナム戦争を面子の問題だけで米国が続けていると決定づける分析結果が記された最高機密文書のワシントン・ポスト紙掲載をめぐる関係者と米国政府の攻防の顛末をスピルバーグがスリリングに描く社会派ドラマ。

正直、期待せずに見たのだがこれは相当に面白かった。ある程度のモラルや社会正義はもちろんあるが、ゲームの勝ち負けを競うように最高機密文書の掲載を目指すワシントン・ポスト編集主幹ベン(トム・ハンクス)と夫に先立たれた名家出身のおばはんオーナー、キャサリンメリル・ストリープ)を軸に小気味よくお話が展開していく。

ハイソではあるが普通のおばはんがだんだん覚悟を決めていく様が恐ろしくかっこ良ろしく、そんなおばはんを事態の進行と共に心の底から尊敬し、共闘していくベンことトム・ハンクスがこれまた非常にかっこよろしい。もはや2大俳優怪獣決戦の体なのだが、一番気分が上がるのは、記事の掲載にOKが出てからの輪転印刷機が回り始める所だったりする。金属活字をカチカチ揃えて、従業員たちが「やるぜ、やるぜ」と一斉に働きだす様は壮観で個人的にピークだった。

最後、報道が使えるべきは国民、という真っ当な最終判決からのウォータゲート事件の発端で映画が幕を下ろすのは皮肉が効いて良いなと思いました。

まあ美化されている場面はあるのだろうが良い働くお仕事映画だった。もとい、良い働く輪転印刷機映画だった。

 

鑑賞時間116分。

先立つものが無さすぎる映画。「スターシップトゥルーパーズ2」

 

2004年の映画。とにかく、金がない印象。バーホーベンが監督ではないので長い事未見だった映画を観た話。最もバーホーベンが監督だったとしても観なかった可能性は否めないが。

とにかく金がない、金がない、金がない、金がないと延々と書き続けたくなるような映画である。全編に渡って金の無さを感じるのだが、冒頭は特に酷く、バストアップのブレブレの画像&過去作(第1作目)の焼き回し映像をひたすら繋いでいる。正直観るのが非常に辛い。これは題材に対して製作費が明らかに足りてないせいで、正直何度も観るのを投げ出したくなる衝動に駆られた。Wikipediaを調べると案の定、金がない。超低予算映画でそもそも企画自体が当初はTVだったよう。詳しくはそちらを観ていただきたい。ただ中盤からはそれなりに観れるものになっておりフィル・ティペット手腕が窺える。筋は「スターシップトゥルーパーズ」meet「エイリアン」&「スピシーズ」みたいな話。前作に引き続き、英雄などというものは情報操作による政治的宣伝であると高らかに謳い、そういった欺瞞に中指を突き立てるアティチュードはベタではあるがグッときました。

お金が無いなりにフィル・ティペットはいい仕事をしたと思う。出来うるならば、ちゃんとした予算で初の長編映画を製作させてあげて欲しかった。

 

鑑賞時間92分。

 

 

 

とりあえず頭パーンは何回でも見たくなるよな。「スキャナーズ」

 

1981年の映画。頭パーンで有名な、あまりにも有名な作品を久しぶりに観た話。

 

なのだが正直な話、「デッドゾーン」の方が好き。なのでこちらの映画はあまり見返さない。今回久しぶりに見返したけどやっぱり「デッドゾーン」の方が好き。っていうかクリストファー・ウォーケンが好きなだけの話なのだが。

でも本作も好きな映画である。マイケル・アイアンサイドも嫌いじゃない。むしろ好き。最近だと「Mr.ノーバディ」に出てましたね。本作の一番凄いと思う所は何よりも超能力者をスキャーナーと呼ばせるキャッチ―さ。そのセンスは正直痺れる。今でも痺れるので、初見の際(多分、中学生の頃)は言わずもがなである。

CGなどまるでない時代のサイキックバトルなのに正直CG過多気味の昨今の画よりも緊張感が漲っているのは流石。そりゃ出世作にもなりますわ。頭パーンとラストの人体発火に目を引きがちですが最終決戦の能力取り込みスキャン合戦の末、容姿がラスボスなのに声が主人公という脳のバグるエンドも非常に味わい深い。しかし、この頃からフュージョン的な発想があって、この後「ザ・フライ」に引き継がれていくのを考えると感慨深いです。

もっとも私、当時ホラー苦手だったので「ザ・フライ」は観ていませんが…。(本作はSF枠で視聴した。)そして今現在も未見なことを白状しておく。

 

鑑賞時間104分。